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5/12(土)公開『孤狼の血』白石和彌監督&音尾琢真インタビュー

2018年05月09日 21:00 by 筒井あや

白石和彌監督最新作は「血湧き肉躍る、男たち渇望の映画」。
昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原を舞台に、刑事、ヤクザ、そして女が、それぞれの正義と矜持を胸に、生き残りを賭けて戦う生き様を描いた映画『孤狼の血』。柚月裕子原作の同名小説を映画化した本作は、『警察小説×仁義なき戦い』と評され、コンプライアンスを過度に重視する昨今の日本の映像業界と現代社会に対する新たなる挑戦となった衝撃作。役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、音尾琢真など、日本屈指の俳優陣による演技合戦がスクリーンに炸裂する。

本作でメガホンを取った白石和彌監督と構成員役を演じた音尾琢真にインタビュー。

——原作の柚月先生とは映画を撮る上で何かお話をされたのでしょうか?

白石和彌監督:柚月先生とは、そんなに話はしなかったですね。
「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」とか、70年代に東映さんがやられていた実録ヤクザ路線で、笠原和夫さんや深作欣二監督が作られていた世界を描きたくて、柚月先生が書いた小説なんです。そういう意味では新しいジャンルの小説だなという感想は持ちましたけど、それ以上にミステリー要素が入っていたり、ヤクザ映画っぽい感じだけど、警察小説としてのインテリジェンスもある、熱量もある面白い原作だなと思いました。
小説でしかなし得ていないミステリーの部分や小説だからこそ成立している部分に関しては、映像に置き換えるにあたりこちらで脚色をして柚月先生に確認していただいたという感じでした。その時に、柚月先生が「映画はお任せします」と仰ってくださいました。ただひとつだけあるのは、「熱い映画を作ってください」ということでした。その言葉で、映画として面白くなるようなことを自由にやらせていただけたので、有り難かったですね。

——その「熱い映画に作ってください」という言葉に、どのように応えようと思われたのでしょう?

白石和彌監督:実は柚月先生のところに行く前に、東映の映画プロデューサーに「『仁義なき戦い』の頃のような熱い映画を僕たちは今の東映で蘇らせたいんだ」と言われて。正直「困ったな」というのが最初の感想でした(笑)。“熱いものを”と言われても、コンプライアンスが厳しい今の世の中では、なかなかやれる方法が思いつかない感じはありましたけど、でも「今それが出来るのは白石だけだ」と仰ってくれたので、監督冥利に尽きますし、やれることはやろうという腹づもりでやりました。

——音尾さんは白石監督の映画に何度も出演されていますが、白石監督ならではの現場の雰囲気がありますか?

音尾琢真:現場で台本には書かれていない演出を、ひとつふたつ加えてくるんですよ。それがシーン自体をぐんと熱量のあるものにしてくれるんです。ホントにちょっとしたことなんですけど、そういう小さいことの積み重ねが役を深めていくし、それを見て、白石監督はずっと笑ってるんです。現場で誰よりも楽しんでいる姿をよく見かけます。その楽しみ方が、独りよがりでなく、みんなが聞いて納得できる。「これ、面白いからやりたい!」ってなるんです。おそらく白石監督の映画に出たい役者はまだまだたくさんいるし、本当にみんなが出たいと思っている監督さんですけど、まあ、僕は毎回出させていただいている身として、みんなには「大したことないよ、白石さん」って言うことにしています(笑)。

——今回の役柄のオファーを受けられたときの感想は?

音尾琢真:まず、笑いました。非常に特殊な、そういった団体の中でもよりゲスい男の役ではあるんですけど。もともと、僕は品行方正な役者であるわけですから(笑)、むしろここまでやっていいんですか?と思いましたね。実は監督は僕の出身の旭川西高校のひとつ上の先輩にあたるので「監督の映画に出させてください」とお願いした日から「どんなオファーでも受けます」と言っているんです。どんなオファーでも受けますといって、ふたつめに来た役が別の作品ですが、ポルノの作品だったんです。それくらい色んな作品を僕にふってくれるので、ありがたいですね(笑)。

今回の役は、ギリギリになって「音尾くん、パンチパーマできる?」って言われて、直前にパンチパーマをかけました。結構痛いんですよ。その痛さにも耐えることが、僕の白石監督に対する服従の証です。なんでもします、という(笑)

——そこまで細かく設定をされるということは、キャラクター像は監督の中にハッキリとイメージされているんですか?

白石和彌監督:もちろんこんな風になるんだろうなというイメージありますが、撮影をしていたらアイディアが浮かんでくるというか、現場に来て、役者さんたちが衣裳をつけて演じている姿を見た時に、気づくことが大きいんです。とんでもないことも思いついちゃうんですけど、これはアリかな?というのは一度やってみないと収まらない。もちろんやってみて却下することもありますけど。

——タイトルにある「血」について。監督からみて「血」というのはどういうイメージですか?

白石和彌監督:血脈というか、血の繫がりがないからこそ、疑似家族を作ったり、ヤクザもマフィアもそうですが、○○一家みたいなものを作りますよね。それは仕事をする上でも、僕はすごくそういうものを感じるんです。僕は若松孝二監督の弟子ですけど、監督が亡くなった後に「凶悪」という映画を撮りました。自分としてはそんなつもりはなかったけど、監督が観ていた世界観を隣で、後ろで観ていたことが、自分の中に残っていたんだなと感じました。監督業を何本かやりながら気づいていって、そういう関係性みたいなものは、劇中の大上(役所広司)と日岡(松坂桃李)には感じました。
生き方とか生き様を繋いでいくのを、たまたま血という言葉で表現しているだろうなと。僕はそう受け取りましたけど、原作の中の思いもそうだったんだろうなと思いました。日岡に受け継いでいく血はなんなのか、生き様はなんなのか、と思っていました。

音尾琢真:僕は躍動する人間たちに流れている熱き血潮みたいな血を感じます。みんなが熱く動きまわっているし、熱い思いがあるし。そういう血だと思います。

——役所広司さん、松坂桃李さんとご一緒されていかがでしたでしょうか?

白石和彌監督:役所さんは、印象としては毎回特別なことをしている印象はないんです。台本にあるト書きと台詞を、演出家のこうして欲しいという思いもくんでくださって素直に演じられている。だから毎回直球を投げている感じなんですけど、その直球の威力が野球に例えると、球威がある感じなんです。重たい感じがするんです。だからひとつひとつの芝居が太く見えているような印象です。

どの作品をみても、役所さんはその都度、役を自分の年齢にジャストフィットさせている印象がある。それは(役を)引き寄せているんでしょうね。この映画は原作は45歳という設定でしたが、撮影時、役所さんは還暦のタイミングでした。でもすごく若く見えるし、この年齢が正解だったんだと常に思わせるような感じがある。それが長年日本の俳優としてのトップランナーであるひとつの秘訣だったのかなと思いました。

桃李くんは2本目だったんですけど、実は(役所さんと)同じような印象があります。芝居に小細工をしないんです。それは別の作品の撮影時にも感じたんですけど、僕の中では、二人はすごく似ている。今、桃李くんは30歳で、このタイミングで役所さんとバディーものが出来るというのは、彼の役者人生にとって、とても大きなことだから、彼が40代、50代、60代になった時にどうなっているのか楽しみです。
作品の選び方も今の若手では群を抜いていますよね。そういう意味でも、これから日本映画を背負って、もしかしたら(役所さんと)同じような歩みをらする可能性があるんじゃないかと思います。
大上(役所)亡くなった後、太陽の様な存在の大上を失った日岡を、映画としてどう支えられるか。それは僕と桃李くんに課せられた大きな課題だったんですけど、僕の力以上に桃李くんがすごく頑張ってくれて、「俺が死んでからが、おもしれーな」って役所さんに言われてました(笑)。すばらしいコンビだったと思います。

音尾琢真:役所さんは昔から憧れの俳優で、何を観ても役所広司にハズレはないなと思わせる素晴らしい俳優さんです。最近は三作ほど共演させてもらえる機会があって、ずっと何をどうしたら、こんないい芝居ができるんだろう?って観ていたんですけど。観ればみるほど、普通のことを普通にやっているだけなんです。でも普通にやっていることが、普通じゃないんです。これは真似できないと思っていました。
その普通に演じていることがナチュラルな(演じていないような)芝居なのかというと、そうではない。とことんお芝居をし尽くして、演技を入れ込んで普通にしているんだなと最近みていて解って参りました。真似していこう、という気持ちです(笑)

 

『孤狼の血』は5月12日(土)全国ロードショー

 

 

 

取材・文:筒井あや
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