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初の個展を開催中、世界で活躍する福岡在住の墨絵アーティスト・西元祐貴の現在と未来

※このイベントは2018年2月11日(日・祝)をもって終了しました。

2018年01月17日 21:00 by 筒井あや

鹿児島県出身、福岡在住の墨絵アーティスト・西元祐貴がアジア美術館にて自身初となる展覧会を開催中。1月6日(土)からスタートし、ライブペインティングには整理券を求めて列を成すほど人気を博す、西元祐貴。個展についてはもちろん、アーティストとして今思うこと、未来に馳せる思いを語ってくれた。

――今回、ご自身初の大型展覧会ということですが、まずはこのスタイルに行き着いたきっかけはどんなことだったのでしょう?

19歳の時に鹿児島から福岡に来て、絵やデザインの勉強をしていました。最初はアクリルや油絵やデッサンなど色んなジャンルのものをやっていていたんですが、描いていることにストレスを感じるようになったんです。もちろん絵を描くことは好きなことなんですけど、自分の中でもっと自分らしく表現できることはないだろうかと思っていました。最初は水彩画を中心に描いていましたが、描いて行くうちに色をなくして白と黒で描いていたんです。それだったら墨で描いてみようかなと思ったのがきっかけでした。なので、日本画や誰かの水墨画に触発されて始めた訳ではなく、自分でやりたくないことを削って行った結果が今のスタイルにたどり着いたのかなと。墨で描くようになってから日本の画家や書を勉強を始めたので、本当に独学なんです。

――このスタイルに辿り着いて、これまでと絵を描く心境に変化はありましたか?

実は悔しい思いをしていました。なんとなく雰囲気で描いても、それが良く見える時もあるんです(笑)。どう描こうかと悶々として描いたとしても、形だけは良く見えてその奥が見えてこない。そこに一番のストレスを感じていて、やり始めてから難しさに気づきました。自分の中でやりたくないことを省き絞っていったのに、その絞った中のキャパシティーを広げるということが一番苦しかったというか、苦労した部分でもあります。

――表現する時に、気をつけていることや創作の軸に置いていることは?

僕の創作のテーマは「躍動」です。ライブペインティングで作品を作ることが多いのですが、それは誤魔化しの効かない一筆一筆が真剣勝負。だからこそ勢いのある、そしてその時の感情がダイレクトに伝わる絵になるんです。創作の時は、作っている最中のライブ感をいかに一枚の絵に書き留めるかを心がけています。それが観てくださる方に、躍動的というか、作品が生きているように感じていただける、というのに繋がるのかなと思っていて、そこはすごく大事にしています。

――「躍動」をテーマにおいたきっかけはあるんですか?

18歳までサッカーをしていたんです。実は画業よりもサッカー歴の方が長いんですよ(笑)。なので、スポーツの感覚に近いのかなと。練習を重ねて、いざ試合の時にはその一瞬で力を放つような、アスリートの感覚があるからかもしれません。だから絵を描くようになってからもアスリートを描くのが好きでしたし、スポーツやアスリートに携わる仕事を絵を描くことでできないかなと思っていました。それが「躍動」を描きたいという思いに直結するのかもしれませんね。

――ご自身の原体験のようなものを、作品に投影している感じなんでしょうか?

そういう感覚はありますね。

――今回、アジア美術館で初めての個展で、さらに巡回展をされるんですよね。新作はどれくらいを作られる予定ですか?

新作は、20点くらいだと思います。6~7年の間に福岡で描きためていた作品をメインに、そこに新作が加わる感じです。メインの作品は新作ですし、他にもカテゴリー毎のメインは新作にする予定です。

――これから新しいテーマを持とうと考えていらっしゃいますか?

まさに今それに向かっているところです。これまで「動」を描いてきて、その逆もあるはずだと思って、今は真逆の「静」の絵を描こうと思っています。これまでは風景画とかは全く描いてこなかったんですけど、ここ2年くらいはすごく描くようになりました。年を重ねることで気持ちも変わってきたのかな(笑)。
今、アトリエが福岡の他に福井県にもあって、そこでも制作しているんですけど、そういう創作の環境の変化があったからかもしれません。すごく田舎の方に行って風景を描いたり、毎朝日本海を見に行ったりとか。そこで気持ちの変化があったのっは確かですね。

――なぜアトリエを福井県に作ろうと思われたのですか?

今、陶板に墨絵を描く作品を作っているんですけど、福井県の窯元さんにオファーをいただいて作品を作り始めたんです。そこで越前和紙の職人さんを紹介していただいて、もう2年くらい経つんですけど、僕が描いている作品の和紙は、全部職人さんに一枚一枚手漉きで作っていただいています。それがあることが、福井県で創作をする一番の理由ですね。

――和紙だからこんな独特の雰囲気というか、作品の空気感があるんですね。

そうなんです。これはオリジナルで不純物をほとんど使っていない和紙なんです。

――先ほど仰った風景画を描き始めて、ご自身の気持ちの変化などはありますか?

少し心が落ち着いた感覚があります。ここ何年もずっと走っていた感覚があるんです。そういう部分も改めて客観的に見つつ、落ち着いて色んな事を考えられるようになってきたんです。墨絵を始めて色んな場所に行ったり、色んな人に出会ったりしたことで自分の視野が広がったというのは実感しています。それに、最近は色も使い始めたんですよ。やりたくないから色を排除していったのに、色の必要性みたいなものを大人になってようやく感じることができたのかもしれないです。やっとそういうことが解ってきたのかも(笑)

――創作者としても、少し変化をしている時なんですね。

気持ちを入れる時と抜く時を自分で少し調整できるようになってきたのかなと。なので気持ちを抜いた時の作品も作ってみたいなと思うようになりました。

――今もその抜いた時の作品作りはされているんですか?

今それをやっているところで、波の動きだけを描きたくて、ただただ波をずっと眺めてたり。昔、自分が一番嫌いだった行為を今はやれるというか。僕も少し大人になったんですね(笑)。

――今回は、これまでのご自身と今、そしてこれからが映し出される展覧会になりそうですが、今、それらを客観的に見て絵に変化を感じていらっしゃいますか?

当時描いていた作品は、やはり気持ちも粗いというか、若いなと思うところもあります。でもそれが悪いとは思わないんです。それはその時の衝動で描いている作品なので、そこにしかない良さもある……という見方もできるようになりました(笑)。だから前の作品を見て、あの時はこんなに描けていたのに今ちょっと落ち着いちゃってるよなって感じる時はちょっと悔しいなって思っちゃいます(笑)。

――きっと、ずっと同じ状態でいるのが苦手なんですね(笑)

そうなんですよ、なんかダメみたいです(笑)

――展覧会では、タイトルにあるように「龍」がメインになるのでしょうか?

「龍」がメインで、その中に僕が得意としている武将なども描きます。もともと「龍」の絵は全然描いていなくて、お仕事をいただいた時に始めて描いたんです。でも墨絵で「龍」ってなんかハマりすぎてて(笑)。墨絵で「龍」の画を描くことって、さして新しいことではないですよね。僕らはこれから何か新しいことをやろうとしている時に、なんで「龍」を描かないといけないんだろうって、若い時には思っていたのですが、実際に描いてみてすごく喜んでもらえたのを覚えています。以来、考え方も変わって来ました。「龍」というのは架空の生き物ですし、崇められる存在でもある。それに毎年、描く毎に表情が変化していっているのが間違いなく「龍」の絵なんです。その変化が僕自身の変化にも重なっていて。なので今となっては、自分と一緒に成長していっている感覚ですね。「龍」を描くことで、僕自身が色んな場所に行けたり、たくさんの出会いがあったり。「龍」を描いてきた軌跡があり奇跡が起こっている。だから「龍のキセキ」というタイトルにしているんです。僕がこれまで絵を描くテーマだった「躍動」とはまた別のところで、「龍」というモチーフには思い入れがあります。

――これまで描いてきた「龍」の絵を見ると、ご自身の変化がわかるんですね。

描いていた年代で、その時の気持ちがわかりますね。でもそれをずっと描き続けてこられたのは、ありがたいなと思っています。なので、もっと進化させていきたいと思っていますね。

――他のアーティストでご自身が影響を受ける方はいらっしゃいますか?

アーティストの生き方としては、ジャン=ミシェル・バスキアが好きで、良くない結果で人生を終わっていますが、そこには真似のできないカッコ良さがあるなと。もう一人、最近僕の中でエポック的な存在は、フランシス・ベーコンですね。作品自体は結構ドロドロしているんです。 友人に勧められて見たら衝撃を受けて。僕は今の平和な時代だから元気な絵を描いているけど、彼の時代だったら同じ肉体を描くのでも、こういう肉体を描くのかもしれないと思っちゃって。

――アーティストとして今後やりたいことはありますか?

海外で展覧会をやりたいというのもありますし、今回の展覧会ではプロジェクションマッピングをやったりVRとのコラボもあるんですけど、そういう最新のデジタルと僕がやっている一番アナログなことのコラボレーションを続けることも目標にしていますが、一番の目標は見る人に何かを届けられたらということです。
それと、これは希望なんですけど、僕が描く「龍」の絵がお守りになるというか、誰かの力の源になれたらいいなということを思いながら描いています。具体的に、何かをやりたいということではなくて、たくさんの方に観て頂いているので、その観ていただいた方に対して、どんな作品を作っていけるのかということを目標にしていきたいと思っています。
僕の絵を見て、“怖い”と言われる方もいらっしゃるんです。でも僕にとってそれはすごくうれしい言葉です。人の気持ちをどう動かしているのか、というのは描いている僕には解らないので、どんな感情でもいいので観て何かを感じてもらえると本当にうれしいです。

 

「西元祐貴 龍のキセキ」 福岡展は、2月11日(日)まで福岡アジア美術館にて開催中。

取材・文:筒井あや
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会場 福岡アジア美術館
期間 ~2018年2月11日(日・祝)
時間 10:00~20:00(入館は19:30まで)
※最終日は18:00まで(入館は17:30)
料金 一般:1,000円 ペア券(2名)1,600円
高大生:700円
※小中学生無料
イベント公式URL http://ryunokiseki.jp/
お問い合わせ TEL:092-532-1111(FBS福岡放送内 平日9:30〜17:00)

プレイス情報PLACE

福岡アジア美術館

住所 福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7・8F
TEL 092-263-1100
URL http://faam.city.fukuoka.lg.jp/
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