映画トピックス | 音楽

三好剛平の2017年ベスト映画歌曲集 Vol.02 SOUL / JAZZ 篇:全曲解説

2017年12月29日 21:00

天神サイトの元編集長、アジア映画商談会「ネオシネマップ福岡」担当、フリーペーパー〈シティリビング〉誌面でDVDコラムを連載中の三好剛平(ラブエフエム国際放送株式会社所属)による、「2017年ベスト映画歌曲集」を2回にわたってお届け!第2弾となる今回はSOUL / JAZZ 篇です。

1.「Every Nigger Is a Star」 Boris Gardiner
【ムーンライト】


今年のアカデミー賞作品賞受賞、涙が出るほど純粋な黒人男性の同性愛を描いた”時代の一本”、そのオープニングを飾るこの曲は、2015年黒人音楽史を完全に更新したKendrick Lamarの歴史的名盤「To Pimp A Butterfly」でもオープニングにサンプリングされていた楽曲で、このタイミングこの題材の映画がそうしたいくつもの文脈に目配せしてここにこの曲を配した意味と狙いは大きい。し、割と当たり前の英語修辞として「Every(すべての)」はしかし「is(単数)」で受ける、すなわち「ひとりひとりの物語」が集まってはじめて「すべて」が立ち起るのだよねえ、とかいうことまで思い至ってしまうほどこの映画はごくごくパーソナルな、しかし、だからこそ普遍的な愛の物語であり、含めてこの映画の登用は完璧であった。(ちなみに僕はもうこの曲が本当に人生級に大好きで、気づくと鼻歌とか口笛で演ってしまうというのをもう何年も続けています)

2.「Redbone」 Childish Gambino
【ゲット・アウト】


映画冒頭、一聴すると穏やかなトーンでありながら「Stay Awake(シラフでいろ)」と不穏きわまる警告を放ち続けるこの楽曲は、恋人の白人女性から誘われ彼女の実家を訪れた黒人青年に起こる想像を絶する恐怖を描くこの映画そのものでもある。人々が表立っては語りづらい人種問題のトピックを、ホラー映画というエンタテインメントに乗せて、鋭く観客の俎上にあげて巻き込んでいく手つきは、優れたコメディ作家でもあったジョーダン・ピール監督の手腕。過去映画への異常なまでのサンプリング姿勢もかまし、クラシックでありながら完璧に新時代、という新たな映画像を達成している。

3.「Angel Baby」 Rosie & The Originals
【牯嶺街少年殺人事件】


今は亡き台湾の名匠エドワードヤンによる幻の一作が25年の時を経て劇場公開されたことは2017年、日本のすべての映画ファンにとって最大最高のギフトだった。無論映画は破格に素晴らしく、どんな言葉もこの映画がとらえきった世界の深淵その奥行きに追いつくことはできないため、観客はもうひたすら「映画を見る」以外にない。当曲は劇中ハイトーンボイスでオールディーズを歌い上げる少年=リトル・プレスリーによって歌われるものだが、この楽曲にもあらわれる少年たちの天使的な無垢が映画のなかでどのように結ばれていくか。どうか皆さんにも目撃してほしい。

4.「Das Hobellied」 Marlene Dietrich
【パーソナル・ショッパー】


忙しいセレブになりかわり服やアクセサリーを見立てて買い付ける"パーソナルショッパー”の主人公が顧客の私生活に触れるなかで秘めていた自らの欲望を膨らませていく。当曲はまさしくその欲望の悪魔の口がひらいてしまう、甘美かつ陶然なる瞬間を完璧に彩る楽曲として配される。ちなみにこの映画、上記に述べたあらすじをオモテとして、並走する裏側ではここ近年の進歩的な文化表現が改めて接近している「幽霊」が大きなテーマとなっており、含めて2017年いま見ておくべき映画としても是非推したい一本。

5.「Pennies from Heaven」Michael Keaton & Linda Cardellini
【ファウンダー】


アメリカ。資本主義。それらの象徴として屹立する「マクドナルド」を、”地方の良質なハンバーガー屋”から“世界を牛耳るメガチェーン”へ一気呵成に成長させた実業家レイ・クロックを描くピカレスク・ロマン。一度目標を据えるやその達成のためなら義理も人情も一切介さずただそれを実現邁進していく姿はあまりに非情かつ清々しく狂気めいておりひたすら圧倒される。当曲は事業拡大路線を強めるなかで出会う美しき人妻(ジャズピアノ弾き。当然クロックはのちに彼女も手に入れる)との初対面のデュエットの場面を彩る楽曲として登場。もっともロマンティックな場面にはいつでも恐ろしい予感が同居する。

6.「One For My Baby」Frank Sinatra
【ブレード・ランナー2049】


前作から30年後の世界を舞台に、違法レプリカント(人造人間)処分の任に就く新たな主人公が巨大な陰謀に巻き込まれる様を描く続編。「人間(的)である」とはどういうことか。実存/非実存を分かつものは何か。といったテーゼを「一度終わったあとの世界」たる2049年のアメリカで繰り広げるとなったとき(撮影ロジャー・ディーキンス、美術デニス・ガスナーがいざなう最高級の映像体験)、”豊かなアメリカの象徴”としてかつて響いたシナトラの歌唱がうら寂しく鳴るこの場面は、誰にとっても忘れがたい記憶として焼きつく。

7.「Greatest Love of All」Whitney Houston
【ありがとう、トニ・エルドマン】


仕事に打ち込む働き盛りの女性主人公のもとに風変わりな父親が突然訪れることからはじまるふたりのいびつな触れ合いを見つめていく家族ドラマ。とにかく見たことのない、だし、2度と真似できない、すごいバランスで大爆笑とじんわり後味を残すドイツ発の大大大傑作。終始笑うべきか苛立つべきか判別のつかないいびつな出来事が起こり続け、中盤この楽曲が投下される場面でそれはまず1回目の極点を記録する。もはやいま見ているこのシーンを俺はどう見れば良いんだと為す術なくただ目前で起きる異常事態を、しかし当曲の歌詞も含め実は周到に導かれながら眺めていると、気づけばもうこの映画の術中にはまり、以降ラストに向かって突き進むのみ。ああ、今でもこのシーンを思い出すと泣けてくる。

8.「Surrender」Lalah Hathaway & Pharrell Williams
【ドリーム】


さあエンディングを飾るのは1960年代アメリカで、宇宙開発の現場で人種/女性差別と闘ってきた黒人女性たちの実録を映画化した感動的な「ドリーム」より。あのNASAですらこの状況だった、いわんや一般社会では、と思うと恐ろしいが、それでも彼女たちは、自らの信念を、自らの能力を、理性と知性を携えて戦い通した。当曲は、その彼女たちの達成を見届けたラストに流れるわけですが、もうこのイントロが流れてきた時点で涙腺決壊。そう、高らかに鳴り響くこれは、まさしく彼女たちが決して屈することなくついに果たした奇跡を世界に響かせる勝利の凱歌だ。ああ、もう!何度聞いても泣いちゃうよ!

ということで大長編になりましたが、いかがでしたか。

なにせ音楽アングルからでもこれだけ語りたいことがあるわけですから(これでも全然足りませんが。あと、これ選曲後に「20thセンチュリーウーマン」を見てチキショーまだ入れたかった曲あったよと悔やまれたりもしてますが笑)、まだまだ色んなアングルから今年の映画たちに迫って参りたいわけです。

もしかしたら近日中に2017年の映画の振り返りもご紹介するかも!?こちらもチェックしてみてくださいね!

PAGE TOP