映画トピックス

10月7日(土)公開『ナラタージュ』行定勲監督インタビュー

2017年09月05日 08:00 by 筒井あや

2006年版「この恋愛小説がすごい!」1位に輝いた島本理生・禁断の恋愛小説「ナラタージュ」。小説発売時から企画を温め続けた恋愛映画の名手・行定勲監督の手により、主演に松本潤、ヒロインに有村架純、共演に坂口健太郎を迎え、満を持して映画化。
高校教師と生徒として出会った二人が、時が経ち再会した後、決して許されはしない、けれど、一生に一度しか巡り会えない究極の恋に落ちる―。恋愛の痛みと、それに勝る幸せを余すことなく描く大人のための恋愛映画。

本作を手掛けた行定勲監督にインタビュー。

――10年の歳月をかけても撮りたかった理由とは?

原作自体が、ある少女の恋愛の原体験のようなものを描いています。原作者もこの作品を書いたのは二十歳くらいだったので、もしかしたら原作者のリアルな体験も入り混じっているのかもしれません。最近の恋愛映画というと、いわゆるラブコメ的な映画が多いですが、この作品は、どちらかというと恋愛が持つ独特の停滞感や、心の動きが丁寧に描かれています。流行りではないかもしれませんが、これが恋愛の本質だと思うんです。本当の恋愛がここには描かれている。ラブでハッピーな恋愛映画だけでなく、これほどリアルで切ない恋愛映画もあっていいと思ったのが、理由のひとつでもあります。

――松本潤さん、有村架純さんのキャスティングについて

有村さんは、僕の組に興味を持ってくれていて参加してみたいという話を聞いていたこともあります。それもあって、彼女の作品を観たりスタッフに話を聞いたりしたら、とても芯が強いし、世の中がこうだからと迎合するわけでもなく、自分のポジションの中で淡々と自分と向き合って演技をする。その感じが泉に似ているなと思ったんです。
松本くんは、この作品に出てくる高校教師の葉山とは少しイメージが違います。映画化を考えていた時に、一番難航したのはキャスティングでした。どうしてもイメージに合う俳優がいなかった。そういう時に、松本くんの名前が挙がり、彼自身がクリエイションをすることに興味を持っていると聞いたんです。イメージに合う俳優が探してもいないのならば、松本くんに葉山になってもらおうと思いました。撮影に入る前に、役のイメージについてかなり話をしました。その上で、撮影の時に松本くんが出してきた葉山の姿は素晴らしかったと思います。アイドルとしての彼自身が持つ華やかさを一切消して、葉山になってくれました。

――監督の中で印象に残っているシーンは?

松本くんが謝っている顔ですね。「ごめん」って何度も謝っているんですけど(笑)。浴室で謝るシーンは上目遣いなんすけど、その表情が捨てられた子犬のようで。あれも本当に謝っている顔なんですけど、こういう顔をして許されようとしているなと(笑)。大体男は許されようとして謝って、許されるとちょっと気持ちが晴れるんですよ。でも女性はずっともやもやしてる。これが男女の違いなんです。
あのシーンは、謝っているけど、自分を変えようとはしていないんです。変えられないんですよ。変える勇気も無い。そういう部分が見えてくるシーンが好きなんです。そこに真実味を見出せるかどうかというのは、演出をしていてもすごく考える部分です。女から観た演出にするのか、男が透けて見える演出にするのか、という度合いを今回はすごく考えました。

――今回はどちらですか?

女性ですね。ナラタージュはナレーション+モンタージュ、女から自己回想していく。しかも喋っている回想じゃなく、夢の中で誰かに自己回想しているだけ、という風に。小説がナラタージュというタイトルで、映画の造語をタイトルにしているから、ナレーションはできるだけ事象を語るように、感情を入れないようにしました。

――松本さんと有村さん坂口さん、編集の段階で3人のバランスをどのように考えられましたか?

僕が持っていたイメージはダメな男に振り回される彼女の姿。そこの葛藤を描ければいいと思っていたので、男のダメなところはたくさん必要でしたね。だから2人の男に影響を受けて、どこに着地するかわからない恋愛の中で、自分の気持ちにブレはないんだけど、そこに向き合おうとする必死さを描ければと思ってやっていました。
坂口くんの役どころのキャラクターでは、去り際をカッコ良くする、という方法もあるんですよ。僕が身を引くよ、いけよ!みたいな。それはたくさん観てきたけど、あのパターンはないと思う。泉を好きになるけれど、泉の葉山への想いに気づいて嫉妬に狂ってしまう。怒るくせに、あーごめんごめん!って最後は謝っちゃう。あの恋愛のごちゃごちゃした感じがリアルなんですよ。まだ恋愛を経験していない人がこの映画を観ると非常に参考になると思いますよ(笑)。

 

「ナラタージュ」は10月7日(土)TOHOシネマズ天神、ユナイテッド·シネマキャナルシティ13、T・ジョイ博多ほか全国ロードショー。

取材・文:筒井あや
このライターの他の記事を読む

PAGE TOP