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つむぐ想い。つなぐ未来。conext:vol.5 濵口仙太郎さん

2017年03月29日 18:00 by 山内淳


CONEXTはアクションを起こしたい人たちに贈る情熱伝播サイトです。自分らしくカッコよく生きる大人たちはどのように働いているのか、なぜいつもやりがいのある現場にいられるのか、どうしてやりたい仕事が巡ってくるのか。一方で夢を追う若者たちは何を考え、今、どのように行動を移そうとしているのか。そんな大人と若者をCONNECT(繋ぎ合わせ)して、NEXT(次)ステージへ。


●集客と送客を繰り返し、まちに寄り添い人を繋いでいく。
近年、福岡市でも受験やライブ日程の重なりや、訪日外国人の増加による宿泊施設不足が課題とされています。そんな時代背景もあり、濵口仙太郎さんはゲストハウス「SEN&CO. HOSTEL(セン・アンド・コー・ドット・ホステル)」を2016年9月に開業。しかし、ここはただのゲストハウスではありませんでした。宿泊者だけでなく、多くの人を惹きつける付加価値とは。

―― これまでの経歴を教えてください。

大学卒業後、IT系、広告代理店、通販、印刷、食品メーカーなど、いろんな会社で広告企画に携わってきました。当時はネットバブル全盛期で、広告マンとしては大変勉強になりました。父は不動産管理会社を営んでいたのですが、2015年に所有するビルの売却話が持ち上がったんです。小さい頃にずっと育ったビルでしたので、今の形でなんとかビルを残せないかと考え、古いビルの再生化やリノベーションを行っている企業の方に話を聞きに行きました。その際にビルの空き部屋を活用して民泊を行う「AirBnB(エアビーアンドビー)」というサービスを知り、実際に空室を貸し出しました。それが不動産業に関わり始めたきっかけです。

―― 「SEN&CO. HOSTEL」はどのように誕生したのですか?

民泊を経験したことで、海外からの宿泊ニーズを強く感じました。建物が古くても、リノベーションすれば採算が取れることも分かりました。しかし、これらの経験を活かしたくても、民泊を会社として運営していくには法整備がまだ追い付いていないのが現状でした。そのため、ゲストハウス(簡易宿所)として旅館業法をクリアできる物件を探し、2015年12月に中央区谷に物件を取得。それからリノベーションを経て、許可を取得し、2016年9月にゲストハウス「SEN&CO. HOSTEL」はオープンしました。

―― 「SEN&CO. HOSTEL」の売りは何でしょうか?

一番力を入れているのが朝ごはんです。一般にゲストハウスは素泊まりプランが多いですが、「SEN&CO. HOSTEL」ではすべてのプランを朝食付きにしています。旅の記憶って食が占める割合が大きいでしょ。それは宿も同じだと思うんです。海外からの宿泊客が多いのですが、メニューは自家製の手作り味噌や塩糀などの発酵調味料を使った和朝食にしています。

↑外国人からも好評な和朝食

―― そのほかにもありますか?

現在、1階は宿泊者の朝食会場としてだけでなく、イベント会場にもなっています。イベントは味噌作りや発酵調味料作りといった糀のワークショップを定期的に行い、これまでほかにもクッキングライブやトークショー、マルシェ、落語などを開催してきました。宿泊者以外の方にも「ここは面白いことをやっているな」と思ってもらえると嬉しいですね。1階はイベント時で最大30名くらい、2階の最大宿泊人数は14名。これくらいが全員と関われる最大人数だと思います。一人ひとりとコミュニケーションが取れる場でありたいです。ビジネス的には、もっと大人数入れられるといいんですけどね(笑)。

↑糀のワークショップの様子

↑1月に開催された「六本松正月祭り」では、「野菜やトラキ」(糸島)の野菜も販売

―― 再開発によって六本松エリアはますます盛り上がりそうですね。

2017年10月には「福岡市科学館」が完成します。「SEN&CO. HOSTEL」でも何かコラボイベントをやりたいと思っています。科学館に集まるお客と、ここに集まるお客様は層が全然違うはず。なので、ここでのイベントを機に科学に興味を持つ人が増えるかも。近くには護国神社や大濠公園もあるので、独自で多彩なイベントを展開して、地域に賑わいをもたらしたいです。

↑大盛況だった写真家のヨシダナギさんを招いてのトークショー

↑出張料理ユニット「東京カリ~番長」と「ミヤムの恋するcooking」主宰の料理家・ミヤムさんのコラボイベントも開催

―― このゲストハウスに込めた想いは?

1階の壁にも書いていますが、「CONNECTING THE DOTS」。これはスティーブ・ジョブズが行なったスピーチの中にある言葉で、「未来は過去の点(体験や経験)と繋がっている」という意味です。これまで多岐にわたる職種に携わってきた自身の経験則から、まさにその通りだと感じています。ですから、若い人たちも点と点が将来に繋がっていくことを信じて、迷わずやりたいことにチャレンジしてほしいと思います。

―― 今後のゲストハウスの展望を教えてください。

ますます高まる宿泊ニーズを受けて、2016年9月に「九州民泊協会」を設立し、僕は理事を務めています。ゲストハウスや民泊は運営する人と泊まる人のモラルを育て、それが文化になれば、ものすごくハッピーなビジネスになると思うんです。それを合法的にやるためのノウハウを蓄積して、税務、経営、不動産、運営のプロのネットワークを組織化し、協会として民泊を健全経営していくことを目的としています。それは、事業者だけの問題ではありません。安心安全な宿泊施設として一般に広く認知されれば、福岡に来る人もさらに増えます。すると、商業施設や交通機関を利用する人も増えるので、街ぐるみのビジネスとしてもっと力を入れていくべきだと思います。そして、古い建物をリノベーションした施設が増えれば、空き家問題の解決策にもなるのではないでしょうか。

↑朝食会場兼イベント会場となる1階

―― 濵口さんはどんな学生でしたか?

福岡大学では「ベンチャー起業論」を受講していました。当時は「何がやりたい」というよりも、「社長になりたい・ビジネスを起こしたい」という漠然とした考えでした。20歳くらいから名刺を作り、大学OBの社長さんを訪ねたりしていました。

―― 若い時にしておくべきことは?

住む場所でも働く場所でも、今いる環境以外の場所に身を置くことです。若い内はたくさんのことを経験してください。それと、外国語を話せるようになっておくこと。昔は日本で外国人と出会う機会はあまりありませんでしたが、今では観光客が増えただけでなく、近所のコンビニや飲食店でも働いていたりもするでしょ。自分が海外に行かなくても、日本にやってくる外国人と出会う機会が昔と比べて格段に増えています。特にこれからの時代、外国語は必要になるでしょう。

―― 濵口さんが一緒に働きたい若者像を教えてください。

やりたいことや目的意識を持った人です。そういう人とは、例えば転職や独立などで離れても、きっとどこかでまた関われると思います。自分が若い頃に先輩からかわいがってもらったように、今は20代、30代の人たちとの会合を毎月設けているんです。それによって職能を持った人たちとのネットワークも広げられます。

―― 今後の働き方についてどうお考えですか?

新卒ですぐに入社する従来のスタイルだけでなく、語学やデザインなど職能を身につけてから社会に出る若者がもっと増えてもいいと思います。旅館業に興味があれば、今度、美野島にも新しい物件ができる予定なので、インターンなどで若者に関わってもらえる仕事もあります。「九州民泊協会」を通じて、若者が働く場所を探すこともできます。悩める若者の手助けもしていきたいですね。

 

濵口仙太郎 Sentaro Hamaguchi

1979年、長崎生まれ。IT関連企業、広告代理店、印刷会社などを経験。2016年9月に当時福岡市中央区唯一となるゲストハウス「SEN&CO. HOSTEL」を開業した。宿泊業のみならず、同施設1階にて糀料理のワークショップやさまざまなイベントを積極的に展開し、再開発が進む六本松地区の活性化に尽力。2016年9月には「九州民泊協会」を立ち上げ、理事を務めている。

 

●SEN&CO. HOSTEL
http://senandco.jp/

●一般社団法人 九州民泊協会
http://kyushuminpaku.com/

 

●取材を終えて

ゲストハウスとしてだけではなく、ワークショップなどのイベントを通じて人と地域をつなげる濵口仙太郎さん。「SEN&CO. HOSTEL」は観光案内所的な役割で人を集客し、周辺の店や施設に送客しています。観光客にとって情報が多いことは親切なように思えますが、情報過多だと選択に困ってしまうのも問題。「SEN&CO. HOSTEL」がフィルターをかけたイベントや情報はユニークで、ここでの出会いが外でも広がっているようです。さまざまな職種を経験してきた濵口さんだからこそ、こんなに洗練された観光案内所的ゲストハウスができるのだと感じました。

取材・文:山内淳
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