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新刊『四月になれば彼女は』川村元気インタビュー

2016年12月22日 18:00 by 筒井あや

2016年、社会現象を巻き起こした映画『君の名は。』、『怒り』、『何者』と数々のヒット映画を作り上げる映画プロデューサーであり、映画化された『世界から猫が消えたなら』や『億男』などのベストセラー小説家でもある川村元気が、最新刊である『四月になれば彼女は』を上梓した。一作目では“死”を、二作目では“お金”と、“自分ではコントロールできないもの”をテーマに描いてきた。そして最新刊となる本作では“恋愛”を描く。

――まず『四月になれば彼女は』というタイトルですが、サイモン&ガーファンクルの曲名でもあり、物語の中にも曲についての話が出てきます。この曲にインスパイヤされて書かれたそうですが、この曲は四月~九月までの半年の愛を歌った楽曲です。小説も四月から始まりますが、三月まで十二ヶ月で構成されていますよね。そこには何か意図がありましたか?

まさにこの小説のタイトルを『四月になれば彼女は』にした時のきっかけが、ポール・サイモンがなぜ四月から九月までしか歌わなかったのか、なんです。この歌は、恋愛の一番美しいところをバサッと切り取って終わっていますが、恋愛の大変な部分ってそこからなんです。男女がピークアウトする恋愛の乗り越えて、どういっしょに居るかということが、一番僕らにとってシリアスで切実な問題なのに、そこを歌わなかった。それはどうしてだ!?と思って、その続きを、つまり失われていく恋愛を男女がどう乗り越えていくのかを書こうと思ったんです。だから小説の書き方を作ることから始めたんです。それに歌の続きを書いた小説ってユニークなものになるんじゃないかと思ったということもありますが。

――川村さんは「世界から猫が消えたなら」で“死”を、「億男」で“お金”を、そして最新刊では“恋愛”がテーマ。自分の意志だけではどうにもならないものを描きたいと仰っていましたが、それはどうしてですか?

それはおそらく自分が知りたいからなんです。簡単に言うと、インターネットで検索して答えが出るものではないから。ネット検索しても出てこない感情や問題を小説で書きたいと思っていて、恋愛の問題は絶対そこに答えはない。僕自身も解らないから書くことで考えるんです。考えて、なぜ自分たちの恋愛感情は失調してしまったんだろうということに対して、問うてみる。その中で、ある答えを見つけたりする。例えばこの作品では「愛することを、さぼった」という言葉を見つけたのですが、自分でビックリするんですよ。それ自体が、同じように失調している恋愛を感じながら、その答えが見出せない人たちがいっぱいいて、僕と同じようにそういう言葉をみて驚く(ハッとする)現象が起こるんじゃないかなと。読んだ人が似たような集合的無意識で繋がれるんじゃないかなと思って。自分が解らないから答えを出したいけど、なかなか答えが見つからないものを書こうとしているんだと思います。

――物語の中に、いくつか映画作品が出てきます。何か決めて選ばれたのですか?

割と散文的に選んでいるんですけど、ひとつ決めていたのは、ハルというキャラクターをフェデリコ・フェリーニ監督映画『道』のヒロイン・ジェルソミーナにするということでした。死をもって生を証明するし、恋愛感情ということと死ぬということは近いというか。この人なんにも良いことなかったんじゃないかと思える人の方が、最終的に決定的なものを見つけているみたいな。僕はどうしてもジェルソミーナ崇拝があるので(笑)、で、ザンパノみたいなヤツが、色んな人から色んなものを奪ったけど、結局何も手に入れられなかった、みたいな。あの感覚を描きたかったんですね。

――作品に出てくる映画は『エターナル・サンシャイン』『道』『her/世界でひとつの彼女』など。これはどれも恋愛映画ですが、どれも違うタイプで、いびつな恋愛というか普通の恋愛物語ではないですよね。それらを選んだ理由はあったんですか?

確かに恋愛の失調を描いている作品ばかりですよね。永遠に愛し合う二人、みたいなものはチョイスしていないですね。上手に愛せない二人を描いた作品ばかりです。今のラブストーリー作品というのは、映画が最先端だと思っているんです。小説でも漫画でもアートでもなくて、映画が一番先鋭的で、『ブルー・バレンタイン』や『世界にひとつのプレイブック』もそうですし、それこそ『her』や『エターナル・サンシャイン』って、あんなに尖った表現で、今の恋愛の真実に迫っている。だから今回ラブストーリーを描くと決めたときに、今の映画人たちと勝負したい、という気持ちはありました。何をもって、恋愛の最先端を描くか。
今回小説に於いて言うと、ラブストーリーと言っておいて、読んでみたらラブレスという恋愛の失調を見せる。読者の心が、階段から足をガタッと踏み外すみたいな感覚になってくれるといいなと思って書いたんです。だから構成もそうしているんです。すごく恋愛が盛り上がった次の瞬間に、パッと場面が変わったら、全く愛が冷め切った主人公が結婚式の打ち合わせを何の興味も無くやっている、みたいな。ああいう階段がゴソッと抜けた時のショックみたいなことを繰り返したいと思っていました。それは成功したんじゃないかなと思います(笑)。

 

川村元気(かわむら・げんき)
1979年横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業。『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『バクマン。』『バケモノの子』『君の名は。』『怒り』などの映画を製作。2011年に優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年には初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞へのノミネートを受け、130万部突破のベストセラーとなり映画化された。他著作として、中国での映画化も決定した小説第2作『億男』、絵本『ティニーふうせんいぬのものがたり』『ムーム』『パティシエのモンスター』、対話集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』など。

 

四月になれば彼女は
川村元気・著

定価:本体1,400円+税
判型:四六判

 

取材・文:筒井あや
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