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11/26(土)公開『疾風ロンド』吉田照幸監督インタビュー

2016年11月25日 18:00 by 筒井あや

映像化不可能と言われていた東野圭吾の「疾風ロンド」を、「サラリーマンNEO」「あまちゃん」を手がけた吉田照幸監督が実写化!主演で大学の医科学研究所に勤めるも、仕事はいま一つ、さらに家庭でも思春期の息子とのギクシャクした関係に悩む研究員・栗林和幸に俳優・阿部寛。共演は大倉忠義、大島優子らの実力派が揃った。本作でメガホンを取った吉田照幸監督にインタビュー。

――サスペンスとコメディー、このふたつを融合させて表現する際に気をつけられた点はありますか?

日本の映画の中で、そういう原作であったとしても、サスペンスの要素が強くなることが多いなとなんとなく感じていたんです。僕はイギリス映画が好きで、イギリス映画のクライムものって、笑いが随所に入るんですよ。もちろん僕自身が、笑いが好きだというのもあるんですけど、笑いが入ることによって作品にテンポが出るんです。ずっと緊張するシーンばかりだと、テンポが一定になってしまって、緩急が出ないんじゃないかと思っていて。ですので、笑いを融合させるということは、ひとつには、エンターテイメントとしてもう一層上の何かを目指しているというのもあるんですけど、サスペンスの疾走感を成立させるための、笑いを入れようと思っていたんです。その笑いも難しいところで、取ってつけたような笑いだとストーリーも緊張感も止めてしまうので、登場人物が一生懸命やっていることが、端からみるとおもしろい、という笑いを作るようにしました。

――主演の阿部寛さんを含めキャスティングはどのようにされたのですか?

台本を直している時に、一番に思い浮かんだのが阿部さんでした。どこか不器用そうな感じというのが魅力と、あと大きな人が怒られている姿って単純に面白いんですよ。穴に落ちるとか、滑稽なんですよ。なので阿部さんがいいなと思っていました。その上に、最終的には人間ドラマにしたかったので、小説では少し親子の関係は薄いんですけど、僕はそこもきちんと描きたかった。だから、そこも含めて演じられる方ということで阿部さんにお願いしました。加えて軽妙なお芝居ができる方というのが基準だったかなと思います。

――大倉さんや大島さんもそうですか?

根津のキャラクターは本当にカッコよくあって欲しかったんですよ。カッコよくて真っ直ぐだから、毒にならなくてバカだなって思えるんです。それ誰が信じるの?っていうことを、本気で言ったりする。そういうのって、問答無用にかっこいいというアイコンが欲しかったんです。そうすると、役者さんというよりも、アイドルで役者さんをやっていらっしゃる方の方がいいなと思っていたので、大倉さんが決まった時はすごくうれしかったですね。 大島さんは、スノーボードができるんですよ。スポーツ映画って、役者がやると素人感満載になっちゃって、そこで映画に集中できなくなっちゃうんですよね。今回だと、雪の上での立ち姿だけでも、玄人か素人かってバレちゃうんです。ですけど、大島さんは9歳からずっとスノーボードをやられていたので、できるんです。林の中も平気で入って行って滑っちゃうんですよ。それに年齢もちょうど25~28歳くらいで、しかも、どこか自分がどこに行こうかという目標を模索してもがいているという役の設定が、あらゆる意味でぴったりだなと思ったんですよね。ですからこれは、実際に大島さん本人に近いキャラクターなんじゃないかと思っていて。それはご本人も言われてましたけど、僕の自負としては、今までで一番大島優子を消しているんじゃないかなと思っているんです。千秋でいてくれたんじゃないかなと思っています。

濱田龍臣くんは、雑誌のインタビューで影響を受けた二人の演出家に僕を選んでくれたんですよ。その選んでくれた理由が、すごく質問をされたっていうんですよ。撮影の時って、一度リハーサルをするんです。彼って子役からやっているから芝居もうまいし、表面でも芝居ができるんですよ。でも今回はそれを壊さなきゃいけないと思っていたんですよ。気持ちで芝居をするのではなく、そう見せるためにやっているから、自分の気持ちを振り返ったことがなかったと思うんです。なので芝居を問うと、一瞬自分で考えるんですよ。それで考えた上でまた芝居をやると、その気持ちが湧き出てくる。子役からきちんと芝居をしてきたからこそ、すぐにできたことなんですけどね。それで一番素晴らしいと感じたのは、彼が父親に対してキレるシーンがあるんですけど、その時に、腹が立ち過ぎて口元が震えているんですよ。型の芝居で口元を震わせるなんてふつうできない。だから本当に怒っているから震えるんです。しかも自分が本当に叫ぼうとしているのを、抑えよう抑えようとしながらも怒りが出てしまうという。あの時に、濱田くんは本当にいい役者だなと思いましたね。だから僕はそれを助ける作業をしていました。そういうところが阿部さんとのシーンにも出たんじゃないかなと思います。

――印象的だったのが、ムロさんと大島さんのチェイスのシーンです。ワンカットで撮影されていましたが、どのように撮影されたのですか?

きっとどうやって撮影したか知ったらがっかりしますよ(笑)。あのシーンがこの小説の映像化不可能だと言われている最たる理由なんです。本当に滑っている様でチェイスをやるのは無理なんですよ。ですけど、あそこがないとこの映画は成り立たない。アクションシーンって最初はすごいなと思って観ていても長く続くとすぐ飽きちゃうんです。だからここのシーンを盛り上げるために、三つくらい撮り方を変えようと、漠然と思っていました。だけどアイディアは全くなくて、そのままカメラマンとの打ち合わせに入り、適当に細かいカットで空撮を入れてって言ったら「そんなものいっぱい観たことがある、他にないの?」って言われて、そのカメラマンさんはセカンドカメラマンだったんですけど、北野武さんとかを撮っている大御所のカメラマンで、僕もちょっと怖くなっちゃって、思わず口をついて出たのが、前の日にYouTubeで見ていた、野沢温泉の上から下まで降りる、一般の人が撮影したGoProの映像だったんですよ。それに見いってしまっていたので、つい口に出たんです。自分の脳が判断する前に(笑)。恥ずかしいじゃないですか。巨匠のカメラマンの前で、素人が撮影したGoProの映像の話をするなんて。でも思わず言っちゃったら、それは見たことないってカメラマンに言われたんです。それで実際に自撮り棒の先にカメラを付けて二人が滑っていくのを地元のスキーヤーが撮ったんです。「カッコー」というレストランが出て来ますが、そこの息子さんに撮っていただきました。林の中を滑っている姿を撮るとなると、実際には撮影する人が一番難しいんです。でも彼は山を知り尽くしているから、ものすごいギリギリを攻めて撮ってくれました。撮り終わった後にみたら、びっくりしましたね。カッコよくて。

そうすると後半は二人が戦っている表情が撮りたくなるわけで。でもこれを撮るのも難しいんです。(滑りながらですから) 結果的に何をしたかというと、自分スローです。自分で、スローモーションで動くのをハイスピードカメラでカメラマンが降りていくのをそりに乗って撮影しているんです。だから少しずつ降りながら、その周りをゆっくり回っています。それは、ハタから見たら大笑いですよ。何をやっているんだ、あの一団はって(笑)。なかなか難しくて17テイク撮りました。それで演じている二人はずっとスローで「うおー!やーーー!」ってやらないといけない。でもあれはどうしてもワンカットで撮りたかった。カットを割って、ひとつひとつ、見せていくと、臨場感がなくなるんです。ワンカットで撮ることによって、初めて気持ちがつながっていくし、それが股間まで行くことによって初めて笑いが起きる。それは外せないことでした。ムロくんと大島さんは現場に来た時に驚いてましたよ。自分スローってなんですか?って(笑)。でもね、これもイギリス映画の『キングスマン』のパクリですけどね。これはカメラマンのアイディアでした。どうやって撮るか迷ってたら、『キングスマン』って自分スローで撮ったらしいよって。なぜあの『キングスマン』がワンカットで延々と本人がやっているのが撮れたのか、不思議でならなかったんです。それを聞いたので、それ使えるってやってみたんですよね。

 

取材・文:筒井あや
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