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10/14(金)公開『永い言い訳』西川美和監督、本木雅弘さんインタビュー

2016年10月11日 18:00 by 筒井あや

西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自身の小説を自ら脚本・監督をつとめ映画化。『おくりびと』以来、約7年ぶりの主演となる本木雅弘が主人公の衣笠幸男役を演じた。本作『永い言い訳』は、とある事故で妻を亡くした男(幸夫)と、母を亡くした子供たち。その不思議な出会いから、始まるあたらしい家族の物語。

西川美和監督と主演の本木雅弘さんにインタビュー。

――監督と本木さん、お互いにお仕事をされていかがでしたか?

西川美和監督:ずっとお仕事をしたいと思っていて、とてもぴったりな役が出来たのでお願いしました。今回の役の年齢設定、見目麗しく、恵まれた容姿に生まれてしまったからこそ、逆に自意識がいびつに発達してしまったということ、小説家という職業設定的な知性、それらが本木さんにぴったりハマったと思っていました。ですが、これまでお仕事をしたことがなかったので、どうなるか想像が出来ませんでしたが、約1年を通して撮影現場でお付き合いをさせていただいて、こんなに自分が書いた登場人物とご本人が持っている性格が似ているなんて、と驚きの連続でした。

ただ、様々なコンプレックスや肥大した自意識など人間の持ちうるありとあらゆる欠点のようなものを寄せ集めた人物像でありながらも、作品を観てくださる方が、幸夫という人物に自分を重ねていける。そして物語が進むにつれ彼にエールを送りたくなる。そんな登場人物であって欲しいと思っていました。そのイメージにぴったりでしたし、撮影現場での本木さんが撮影が進むにつれ、役に悩まれている様子を私達スタッフ全員が「大丈夫です!」と励ましながらの現場の雰囲気が重なっていきました。そうできたのも本木さんご自身がとても魅力的な方だったからだと思っています。見事に座長を務めて頂いたというのが実感です。

本木雅弘:西川監督作品を「ゆれる」しか観ていなくて。それも妻に勧められて眠い目をこすりながらおぼろげに観たという感じでした。でも今となっては、そういう状態のまま、撮影現場に臨めたのはよかったなと思っています。女性の監督といっしょにお仕事をさせていただくのは初めてだったので、どんなものを引き出していただけるかということに興味を持っていました。脚本を読ませていただいた段階で、幸夫という役が、自分そのものだなと思ったところもあり、撮影現場でそんな自分の情けなさ、ぼろさをスクリーンに焼き付けていいものかと不安でしたが、監督にそういうまとまっていない、混乱したままの姿を撮りたいと言っていただいたので、まさにそういう姿のままを見せながら、それを監督に見守っていただいたという感じでした。

現場での監督には、さすが小説を書かれる方だなと思うくらい、たくさんの言葉を使って演出していただきました。そしてとても男前な感じの、安易に現場の雰囲気だけで首を縦に振るという感じではなかったし、考える時間が欲しいと言うときには、そういう間を置いてくださったし、その意味でも信頼できるなと思いました。ですので非常に男勝りな西川さんという印象でしたけど、仕上がった作品にはかすかな幸福感が残っている。とてもしんどい話ではあるけれども、人間なんてみんなある意味不完全なまま人生を進んでいくんだ、そういう中で小さな気づきが積み重なっていく。だから悩む、迷うという人間のどうしようもなさというのは、愛しいものだと包み込んでくれたような作品になりました。私としては初めてみた監督の母性のようなものを感じる作品に仕上がっているなと思いました。

――「永い言い訳」というタイトルの理由は?

西川美和監督:すごく意味深なタイトルだと自分でも思っていて、未だに私自身がどうしてこのタイトルを付けたのかわからないんです。小説の第一章を書いている中でふと出てきたフレーズで、最初は「長い」という字でした。違う文脈で出てきた言葉だったのに、この言葉に全てが集約されていると直感的に感じました。しかもこれがこの主人公の生きていく限り永遠に続いていく、亡くした妻に対しての言い訳のような話になるんじゃないかと。直感的に「永い」という字を使った方がいいんだろうなということを発見してからは、このタイトルが柱になるような気持ちで、物語を書いていきましたし、未だに何を意味しているのかということを、明確に言葉で解説することは私にもできませんが、でもやっぱりこのタイトル以外は、この作品にはないと確信しています。

――「永い言い訳」というタイトルを演じている中でどのように感じられましたか?

本木雅弘:最初に脚本をいただいた時に、「永い言い訳」というタイトルにすごく吸い込まれたところがありました。瞬時にして、永遠に続く言い訳だと思ったんです。出来上がったものを見ると、これは幸夫が亡くなった妻に言い訳という名の愛のメッセージを送るというような単純なものだけではなく、「永い言い訳」=「人生」みたいな、誰にも当てはまるものだと思います。誰もが何かに対して永遠に言い訳をし続けていくのが人生、またそれが赦されたり、そのことをきっかけに変化できたり、というような捉え方でした。

 

『永い言い訳』は、10月14日(金)TOHOシネマズ天神、KBCシネマほかにて全国ロードショー

 

 

 

取材・文:筒井あや
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