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エリザベス女王をして“緑の魔術師”と言わしめた石原和幸氏が来福!

2016年08月28日 08:00 by 山内淳

今年5月、イギリス・ロンドンで開催された歴史と権威のある国際ガーデニングショーの最高峰「英国チェルシーフラワーショー(※1)」にて、庭園デザイナーの石原和幸さんが芸術性と職人的アプローチが求められるアーティザンガーデン部門で5年連続金賞と、全部門の中での最高賞となるプレジデント賞を初受賞。それを記念して、「西鉄グランドホテル」で取材会見と祝賀会が開かれました。

(※1)英国チェルシーフラワーショー:エリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会(RHS)が主催。1862年にケンジントンで開催された「グレートスプリングショー」を起源に、1913年からチェルシー王立病院に会場を移す。毎年15万人もの入場者で盛り上がる国際ガーデニングショー

↑受賞作のガレージガーデン「千里千庭」

―― まずは、日本人初となるW受賞おめでとうございます。今回受賞された「千里千庭」のテーマを教えてください。

石原:テーマは車庫と庭を融合させた“ガレージガーデン”。庭をなくしてガレージを造るのではなく、どちらも活かした庭造りが審査員に評価されました。ガレージは車いじりやDIYだけでなく、オーディオを置いて音楽を聴いたり、読書をしたりできる、もうひとつの部屋。趣味の部屋・ガレージ・庭の3つをまとめた一体感のあるデザインを心掛けました。ガレージという限られたスペースであっても、人生を豊かにする空間づくりができることを提案しています。

―― ガレージガーデン「千里千庭」着想のヒントは何でしょうか?

石原:今の時代背景です。ストレス社会やテロ事件、環境問題などさまざまな不安がある中で、家庭の絆が改めて大切だと思うんです。せめて家の中では幸せな時間を過ごしてほしい、と願いました。世界レベルの問題は個人では解決できないけれど、家族や恋人、友人という最小限なコミュニティが笑顔になることの積み重ねが、世界を変える大きな力になるはず。

―― 確かにそうですね。

石原:そのためには、まず自分自身がハッピーになることが大切。人は花や緑を見ると笑顔になって、優しい気持ちになるでしょ。ガレージという身近な場所が庭と融合して、花と緑にあふれることで笑顔になると、人を家に呼びたくなってきます。すると、庭を見た人々の心も豊かになるんです。そんな花と緑を通じた人間関係の輪が世界中に広がっていけばいいな、と思いました。

―― 作庭ではどんな苦労がありましたか?

石原:気候の変動です。植物は日本から持って行くのではなく、現地のナーセリーで調達しなくてはなりません。今年のイギリスは暖かかったため、植えたい植物が花を咲かせていたりして調整が難しかったです。現地の生産者の方にスペアの植物をたくさん確保してもらうことが必要でした。いい庭を造ろうと思ったら、いい人間関係なしには造れませんね。

―― ここ「西鉄グランドホテル」のアレンジもデザイン・監修を行っていますよね。

石原:はい、一昨年の12月にホテル1階レストランの庭園をはじめ、内装と外装のフラワーアレンジ、昨年2月には5階チャペルのガーデンを手掛けました。福岡の中心部である天神・大名にも森をつくりたくて、「大名の杜」をテーマにデザインしています。

↑レストラン「カスケード」(左)とチャペル「ジュレ」(右)の庭園は、過去の受賞作を一部再現

―― 「大名の杜」の見どころはどこでしょうか?

石原:四季折々の花々です。植栽している花や緑の99.9%は久留米市・田主丸産で、従来その土地にある植物を使い、一年中花が咲き乱れるように工夫しました。田主丸の花や緑が天神に増えることで、天神にも鳥が飛んで来るようになります。メダカやホタルも放流してビオトープ(生物の生息空間)を創出し、何度も足を運びたくなるような庭園にしました。田主丸で生産された植物を天神で消費することは、地産地消の生態系と経済活動を生み出すことにも繋がっています。

↑初夏には蛍が舞うレストラン「カスケード」の庭園(左)。優先駐車スペース(右)などホテル周辺も色鮮やかな花が彩る

―― 来年3月にリニューアル予定の「かしいかえん」でも、デザイン・監修を行うそうですね。

石原:“花園(かえん)”という施設名らしく、園全体をフラワーガーデン化します。子供たちが喜ぶ動物のトピアリー(※2)を配置したり、年輩の方が楽しめるように「英国チェルシーフラワーショー」を再現したり、幅広い世代が花と緑を楽しめるようにします。そして、私が所属する吉本興業と一緒になって、花と緑をベースにしたイベントを提案していきたいです。園芸も演芸も人を笑顔にするもの。これらを融合した笑顔あふれる空間づくりに期待してください。

(※2)トピアリー:針金などの型枠に草花やアイビーなどのツル植物を這わせて作成したオブジェ

↑フラワータワー(上)、緑の動物園(左下)、「英国チェルシーフラワーショー」を再現した庭園(右下)のイメージ

―― 今後の目標や夢を教えてください。

石原:世界最高峰の舞台は刺激になるし、勉強にもなるので、「英国チェルシーフラワーショー」には来年以降も出展していきます。今回の受賞に慢心することなく、観客がもっとビックリするような提案をしていくことが目標です。2020年の東京オリンピックでは、マラソンの沿道を花で繋げたり、表彰台に松がドーンと飾ったり、会場を花と緑で彩るのが近い将来の夢です。まだ依頼はありませんけど(笑)。いつかは「石原が造った庭を見に行きたい」と世界中の人々を動かせるような仕事がしたいです。長期的な夢としては、ガーデニング文化をもっと盛り上げ、花や緑の生産者をはじめとする造園・園芸産業の発展に貢献したいと思っています。

<石原和幸 プロフィール>

1958年生まれ、長崎県出身。株式会社石原和幸デザイン研究所代表取締役。22歳で生け花の本流『池坊』に入門。以来、花と緑に魅了され路上販売から店舗、そして庭造りをスタート。その後、苔を使った庭で独自の世界観が国際ガーデニングショーの最高峰である「英国チェルシーフラワーショー」で高く評価され、2004年の初出展から2016年までに計8個の金メダルを獲得する。“ボタニカル・エンターテイメント”を国内外に提案すべく、「世界を花と緑でいっぱいに」をスローガンに活躍中。

取材・文:山内淳
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