グルメ

ガストロノミースタイルのフランス料理とフランスワインを楽しむレストランが西中洲に開業

2016年08月24日 08:00 by 山田 祐一郎



大きな白い皿に、料理がのる。まるで海のような余白の中で、優雅に料理が泳ぐよう。シェフ・有馬亮さんは、カメラマンに料理の写真を撮影してもらう際、「できるだけお皿の縁が映らないようにしてほしい」とお願いするそうです。もちろん、料理やソースの形状をとどめる、もしくは引き立たせるために皿を利用することもあり、全てにおいて皿の存在感を消すというわけではありません。ただ、どこまでも真っ直ぐに、料理だけのスポットを当てたい、そんな思いが有馬さんの中に明確にあります。





そう思って見渡すと、白一色に統一された店内は、その空間そのものが“皿”のようにも感じてきました。大きな皿の中で料理と向き合う。対峙――それはまさに店名「Arena」の意味する「闘技場、試合場、土俵、道場、活動の舞台、競争の場」というイメージそのもの。気がつけば、食欲は躍動し、目は冴え渡り、とことん楽しんでやろう!と心踊る自分がいました。



7月6日にオープンした「Restaurant Aréna」。有馬さんは21歳で料理の道へと足を踏み入れました。元々、目指していたのは映画音楽の世界。そんなユニークな出自が、料理の源泉にあります。
前菜からデザートに至るまで、料理を手掛けるのは有馬さん1人。映画音楽はそのシーンごとに、ふさわしいリズム、トーンの楽曲が添えられます。フレンチにおけるコースを構成する一品一品の料理も同じなのかもしれません。食材における季節を捉え、それらがもたらす季節感を自由自在にコントロールし、強弱をつけつつ、丁寧に紡いでいく。淀みのないストーリーこそ、コース料理の真骨頂。




「Aréna」はガストロノミースタイルのフランス料理とフランスワインを楽しむレストランです。現在、ディナータイムのみの営業で、コース(18:00~22:00)は1種(10,000円 ※税込・サービス料別、前日までに要予約)のみ。その日のベストを尽くす。そんな意気込みを感じます。コースは10皿構成で、上記の写真はその一例です。おおよそ月に一度のペースで内容は変わっていきます。おおよそ、というのは、仕入れる食材によってはきれいに一ヶ月周期にならないという意味。有馬さんの真摯な姿勢に好感を覚えます。

8月の料理の中から、少しずつ所感を。1品目に出された「トマトコンフィ」はトマトと馬肉を合わせ、辛味大根とスダチの香りをアクセントに。トマトのスカッと抜けのよい甘みと酸味、馬肉によるねっとりと濃密な食感と甘み、そこに一抹の辛味が加わります。食欲を刺激する赤いビジュアルもまた、始まりの1品としてもってこい。

続く2品目、「ル ヴェール」への展開にもうっとりしました。フランス語で「緑」を意味するそのままに、ツルムラサキやキュウリ、7種ものハーブといった緑の食材たちを、パクチーとセロリによる濃い緑のピューレ、フロマージュ仕立ての白いピューレで味わいます。ツルムラサキの土っぽいねっとり感が、たっぷり効かせた酸味を見事にひっぱり上げ、舌にその魅力をダイナミックに運んでくれます。酸味のインパクトが大きい一品ではありますが、後に残らず、やはり序章にふさわしい。

その後、甲殻類、魚、肉の料理へと移行していきます。この日の甲殻類の料理は「オマール エ レピス」。絶妙な火入れによって汁気を蓄え、フレッシュ感と弾力感を保ったオマール海老に赤オクラを添えて。そして焦がしたオマール海老の殻にフォンドボーを合わせたソースによってストレートに素材感を打ち出してありました。

「コート ド ヴォー」の主役となる仔牛のロース肉は、通常なら取り除くべき脂やスジをあえてそのままに。「ぼくはここにこそ味があると思っています」。有馬さんの言葉に背中を押されて食べてみると、やわらかい肉質ながらも繊維がピッと立っていて、ほどよい食感。噛みしめるほどに旨みがジワリと滲み出るんですから、飲み込むのが惜しくなります。ジャガイモのピューレ、パルメザンチーズのエミュリューション(泡)も仔牛の味わいを際立たせる名脇役です。

デザートにはレモンクリームをホワイトチョコレートでコーティングした締めくくりの「オパリス シトロン」を。酸味と甘みのハーモニーを軽やかに舌で体感できました。美しい球体のホワイトチョコレートを崩すという行為に、楽しい時間の終わりを重ねてしまいました。




ちなみに22:00以降はワインとフロマージュが用意してあり、ワイン1杯(1,000円〜)からでも、気軽に立ち寄れます。

「料理の正解とは何か、常に考えています」。有馬さんのそんな一言が強く心に残っています。料理の火入れ一つとっても最高の調理とは何かを考え、時間、温度、タイミングを変える。ソースが異なれば、食材の印象はがらりと変化します。追求こそ、有馬さんのフレンチなのです。

取材・文:山田 祐一郎
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プレイス情報PLACE

Restaurant Aréna

住所 福岡市中央区西中洲10-3
TEL 092-406-4437
営業時間 18:00〜25:00(LO24:00)
定休日 不定
URL https://www.facebook.com/arena.cuisine.fr/
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