グルメ

常連を虜にした江戸前の技術とお人柄。ここ福岡で花開く

2015年11月12日 18:00 by 木下 貴子

「どれだけ大きいか、お見せしましょうね」。北海道から直送しているという厚岸のカキの話になった時、そう言って大将・岡田正人さんが実物を出してくれました。「厚岸湾で育ったんですが、岩ガキのようでしょ」。握りこぶし程の大きさのカキに驚いていると、「これ分かります?」と続いて見せてくれたのは、ホラ貝のような巨大貝。「本ツブ貝です。九州では小さなツブ貝が主流ですが、実際のツブ貝はこんなに大きいんですよ」。そのツブ貝を刺身でいただく。柔らかくシャクシャクした食感、アワビのように豊潤な磯の香りが鼻腔に抜けた後、貝の甘味が広がります。

大阪出身で、東京の寿司屋で20数年修業した岡田さんが、縁もゆかりもない福岡に店を開くことになったのは、東京の店の常連さんの熱烈なアプローチによるものでした。福岡を終の棲家に決めているその方から、福岡に店を出してほしいと何度もくどかれたのをきっかけに独立。1年越しの準備期間を経て、10月10日に『鮨 おかだ』を薬院にオープンしました。東京で長年培ってきた技術、知識、経験。「せっかくならば、博多では味わえないものを極力お出ししたい」と岡田さん。冒頭のようにこちらではあまり見かけない食材を積極的に仕入れてメニューに載せます。

メニューは「おまかせコース」(10,000円)を中心に、一品料理、お好み握りも楽しめます。握りは江戸前。ネタは熟成させたり、〆たりという基本の技をしっかり施すなかで、岡田さんならではの味が表現されます。例えば、「うちでしか味わえないコハダ、と自負しています」と出してくれたコハダは、光ものの味わいをうまく出しつつ酸味を利かせ、そこにふわっと漂う柑橘の香り。そして、柔らかいのにギュッと押し返すような弾力! イクラも生に近い漬け方がされてあり、卵かけごはんのような味わいと舌触りでさらっと口の中で溶けていきます。

「僕は寿司職人というより、舞台役者という気持ちでカウンターに立っています」と話す岡田さん。「舞台のようにお客様に楽しんでいただき、喜んでいただきたい」。六本木や西麻布で美味を知り尽くす食通たちお相手に、寿司を握り、腕を鍛え、晴れて自分の舞台を構えた岡田さん。腕前はもちろんのこと、珍しい食材や旬の食材を使う巧みな演出、話術も達者で自然に会話が弾みます。オープンして1カ月の間に、すでに東京をはじめ全国から常連さんたちが駆けつけているというのも納得。ここ福岡で話題に上るのも、さほど時間がかからない予感がします。




【1】握りのネタは日によって替わります。写真右上の「芽ネギ」のような珍しいネタも。「握りも極力、よそでは食べられないネタを取り入れたい」と岡田さん。なおシャリは、ひと肌の温かさ、口に入れると花弁が散るようにはらりとほどけます。その秀逸さを味わうためにも、出されてすぐにお口にどうぞ
【2】魚ばかりで飽きてしまわないようにと、肉料理をコースの一部に入れたり、一品メニューにも載せています。65度の温度でじっくりと真空調理して肉の旨味を中に閉じ込めた「宮崎EMO牛 ローストビーフ」(1,800円)は、噛むほどに甘味が深まります。ソースは自家製味噌ダレ。シャンパンやワインとともに味わいたい一品です
【3】料理を1人で切り盛りしているため、またゆっくり過ごしていただくためにも、事前予約となっています。テーブル席、個室もありますが、岡田さんの舞台を堪能するならぜひカウンターへ

取材・文:木下 貴子
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プレイス情報PLACE

鮨 おかだ

住所 福岡市中央区薬院4丁目8−3
TEL 092-534-1888
営業時間 17:00〜24:00(OS23:00)
定休日 不定
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