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『三度目の殺人』是枝裕和監督インタビュー

2017年08月22日 12:00 by 筒井あや

カンヌ国際映画祭・審査員賞受賞から全世界へと広がった『そして父になる』の熱狂から4年──。
是枝裕和監督×福山雅治主演というタッグに加え、名優・役所広司が是枝組に初参加。共演に広瀬すずらを迎え、日本を代表する豪華キャストの競演が実現。

この映画で初のサスペンスに挑んだ是枝裕和監督にインタビュー。

――今回「弁護士」という職業に注目されたのはどうしてですか?

「そして父になる」の撮影で、法律監修に弁護士さんに入って頂いたんです。いつもすごくいいスーツを着て、イニシャルが刺繍されたワイシャツを着て、金の犬のカフスをして、いい靴を履いてるんですよ。その弁護士さんたちと撮影が終わって何度か食事に行ったんです。その時、弁護士同士で「よくテレビで裁判のニュースをやっていて、判決が出て、控訴が決まって、レポーターがマイクを持って『真実を究明する舞台が地裁から高裁になりました』とか言うんだけど、別に法廷は真実を明らかにする場所じゃないから、あれは違和感があるよね」って話をされていたんですよ。だから僕が「じゃあ何をする場所なんですか?」って聞いたら、「利害の調整をする場所です」と話してくれたんです。そんなリアルな弁護士の話を聞いて、ゾッとする反面、むしろこの人たちは誠実なんだなと。

その姿を描けないかと思ったのが最初のきっかけでした。司法の持っている、システムとしての危うさ、怖さ、みたいなものを、一つの殺人事件を描く中で見えてくる背景を映画にしたいと思いました。ただ、観念的な面では「人は果たして人を裁けるのだろうか?」ということや「人は人を理解することができるだろうか?」ということは、考えながら撮らないと、単に犯人は誰だ?という作品になってしまうので、もう少し深いところにある問いを、観た方も共有していただける作品にしなければならないと思いました。

――今回の作品は、音楽が観ている人の心情を揺るがすと感じました。ルドヴィコ・エイナウディさんは日本映画に参加するのは初めてだそうですが、なぜルドヴィコさんにお願いしようと思われたのですか?

2年半くらい前に、映画祭を回っている移動の飛行機の中で初めて彼の音楽を耳にした時、非常に映像が浮かぶ音だと思ったんです。もちろん映画「最強の二人」の音楽も担当されていましたから、映画音楽のことは解っていらっしゃるだろうし、どこかのタイミングでお願いできないかと思っていたんです。例えば「海よりもまだ深く」や「歩いても歩いても」みたいな作品だったら、お願いしなかったと思います。この作品は、いわゆる日本映画というよりは昔の洋画にあったサスペンスや法廷劇の色合いが強かったし、自分の頭の中にあった映像のイメージに乗るなと思ったので、思い切ってお願いしました。外国の音楽家の音を日本の役者の顔とか風土に乗せるのって、やや危険ですから(笑)作品を選ばないといけないなとは思っていましたね。

――役所広司さんとご一緒されるのは初めてですよね。役所さんの演技はいかがでしたか?

僕が語るのはおこがましいですよ(笑)。日本で一番うまい役者だと思っています。何をやってもそのものに見えるのは、彼が一番ですね。決して極端な役作りをするわけではないのに、それこそ山本五十六にも見えるし、田舎の林業のおじさんにも見えるし、井上靖にも見えるっていうのは、いつも「何だろう?この人は」って思いますね。コメディー作品に出ていても役所さんだけは本物(役そのもの)に見える。作品の世界を壊さずに本物に見えるというのはすごいなと。今回、接見シーンで出てくる度に、本当に殺したのか殺していないのか、善人なのか悪人なのか、という演技ですよね。どれも本当に見えないといけないし、どれも嘘に見えた方がいい……というより、役所さんだからそういう役にしました。彼ならできるだろうと当て書きしているところもあります。だけど思った以上にスゴかったですね。

 

『三度目の殺人』は、9月9日(土)TOHOシネマズ天神・ソラリア館 ほかにて全国ロードショー。

取材・文:筒井あや
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