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映画トピックス

超個人的見解で選ぶ「2016公開映画 至極の5本」《邦画編》

2016年12月30日 12:00 by 筒井あや

《洋画編》に引き続き、今回は《邦画編》。こちらも2016年に公開された映画で、私が観た作品の中から、至極の5本を選んでおります。(昨日も書いたけど、250本を超えてから数えてません)ということで、「これ、映画館の大スクリーンで観てホントよかった!」と感じた作品を厳選しました!

今年もやっっぱり原作ものが多かった日本映画。オリジナル脚本もたくさんありますが、大ヒット!と言われる作品は原作ものが目立っていたような……。もちろんこれも独断と偏見たっぷりにセレクトしておりますので、苦情は一切受け付けません。悪しからずご了承くださいませ。

では、行きましょか!

★TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ 6月25日公開 ★

宮藤官九郎が脚本・監督を手掛けた奇想天外コメディー。宮藤監督は、この作品のことを「地獄を舞台にした青春ロックミュージカルコメディー」と言ってましたね。とにかく最初から最後まで宮藤節が炸裂した、というか宮藤監督、好きなもの全部入れたでしょ!?と言いたくなるほど好き勝手。でもその好き勝手が、ちゃんと作品になって、しかもまあまあな感じで感動したりもするからスゴい。

物語は、普通の高校生・大助は修学旅行中にバスの転落事故に遭い、死んでしまう。目覚めるとそこは、本物の地獄。戸惑う大助の前に、地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」のボーカル&ギターで、地獄農業高校の軽音楽部顧問をつとめる赤鬼・キラーK(長瀬智也)が出現。現世によみがえる方法があることを知った大助は、大好きなクラスメイト・ひろ美ちゃんとキスするため、キラーKの厳しい指導のもと地獄めぐりを開始すのだが……。というまさに奇想天外な物語。

元々演劇好きな私は、舞台セットや演出方法が、とても演劇的にできていることも高得点の所以。宮藤監督は松尾スズキ主宰の「大人計画」という劇団のメンバー。映画を作るよりもずっと前から演劇を作っているのに、映画作品になると全くその手法を使わないことも不思議だったのですが、監督曰く「逆に使っちゃいけないような気がしてた」のだそう。演劇的に作ったからかどうかはわからないけど、とにかく細部まで笑わせようとしてる感じが伝わってくる。もちろんミュージカル、というからには音楽も芝居と同じくらいのボリューム。作詞は全て監督自身が手掛け、作曲は向井秀徳。

主演を長瀬智也で、音楽ものを作りたい。ということから作品作りがスタートしたというけど、ガッツリ特殊メイクで“これって長瀬っぽくない?”ってなくらいしか長瀬感を出してないところもツボだった。そしてこの作品で、思った以上のコメディー俳優ぶりを見せつけたのが、神木隆之介。絶妙な間で、日和った高校生男児を演じきっている。他にもホントにちょい役で、マーティ・フリードマンやChar、野村義男、ローリー寺西らが参加しているのも見逃せないポイント。この映画を観た時、すでに今年一番はコレだ!と思ったくらい。

 

★永い言い訳 6月25日公開 ★


©2016「永い言い訳」製作委員会

西川美和監督が、第153回直木賞候補作にもなった自著を自らの監督、脚本により映画化。交通事故で他界した妻の死に対して、悲しみを表せない小説家が、同じ事故で命を落とした妻の親友の遺族と交流を深め、家族の在り方を見つめ直していく物語。本木雅弘が約7年振りに主演を務めた。

物語としては、ややファンタジーが入った作品だけど、そこに生きている人たちがリアルでざらざらとした手触り感がある。本木雅弘という俳優は、こんな芝居ができる人だったんだ、と新しい発見をした。約1年間をかけて撮影されたからなのか、他人がじわじわと家族になっていく様子が自然に映し出されている。中でも成長が目覚ましいのは、子役で兄妹を演じた兄・真平役の藤田健心と妹・灯役の白鳥玉季。特に妹のあーちゃん(灯)は、映画の中で驚くほど成長している。だんだん本木雅弘演じる衣笠幸男と家族のようになっていく姿を、観客はきっと見守るように愛でるんだな。

俳優の演技が素晴らしいとか、物語が抜群におもしろいとか、演出が個性的だ、というどれかが抜きん出ているわけじゃなく、どれもがいいバランスで、ちょうどいい感じで成立しているのがスゴいんだと思う。実を言うと、この手の日常半径5m以内で起こっている出来事を映画にしている作品は、そんなにタイプではないのだけど、この映画のバランス感覚は素晴らしいと感じずにはいられなかった。春夏秋冬の印象的なシーンが、観終わった後に、ぽつ、ぽつと思い出される。そういう意味でも、ずっと頭に残っている作品だった。

 

★海賊とよばれた男 12月10日公開 ★


©2016「海賊とよばれた男」製作委員会©百田尚樹/講談社

明治・大正・昭和の激動の時代を舞台に、名もなき一青年から身を興し、やがて戦後の日本に大きな勇気と希望を与える大事業を成し遂げていく主人公・国岡鐡造の姿を描いた「海賊とよばれた男」(百田尚樹著/講談社文庫)を山崎貴監督が映画化。知っている人も多いと思うけど、これは出光興産(北九州門司市で創業)の創始者出光佐三をモデルにした物語。なのでどことなく親近感がわくことは事実(あ、この親近感があるから選んだ訳ではない)。

主演は岡田准一。映画の冒頭シーンに出てくる岡田准一が演じているのは、60代の国岡。登場してマジびっくり。本当に60代のおじさんにしか見えないんだから。岡田くんは常々、作品に入る時はまず“岡田准一”を消すことから始めると言っているけど、やっぱりどの映画を観ても、岡田准一以外の何者でもないんだよな〜と思っていた。でもこれは、消えてた!それってスゴいことだと思うんですよ。自分を消すって、やれそうでやれないし、ましてや20代〜60代までを一人で演じるのに全くの違和感がないというのがさらにスゴい。歩き方も、所作も、声も、年代ごとに演じ方を変えてると思うんだ。絶対。聞いてないから、本当にそうしているのかわかんないけどね。でも絶対変えてる。しかも明確に。その一点のみで、選びました。あ、あと個人的に山崎貴監督の作品が好きだってのもある。主観だけど、山崎監督の作品は、画面に無駄がないのが好きなんだ。もちろんVFXを駆使しているので、画面の作り方はいかようにもできるけど、その画の切り取り方が好みなんだな〜。モロタイプな作品です。

 

★シン・ゴジラ 7月29日公開 ★


©2016 TOHO CO.,LTD.

先に言っておきますが、「ゴジラ」は特に好きではありません。じゃどうしてこれを選んだのか、というとこれまでの「ゴジラ」とは全く別ものだったからです。だから最初は一体『シン・ゴジラ』って、なんなん?と思ってました。新ゴジラなのか、真ゴジラなのか、神ゴジラなのかわかんないじゃんとも思ってました。すみません。色々調べたら、トリプル・ミーニングなのですね。最初は、実写化エヴァンゲリオン的なんじゃないかと思って観てみたら、ゴジラが縦横無尽に東京の街をぶっ壊す感じとかが思いの外、爽快感。色々小さなこと考えて悩んでいても、ゴジラがやってきたら木っ端微塵になっちゃうんだな〜とか思いながら観てました。

キャッチコピーにあるように日本対ゴジラ=現実×虚構が、そのままだった。でもこれまで観てきた「ゴジラ」と違っていて、頭脳対力技、ハイテク対アナログという図式がくっきり見えるところも、潔い。現代の日本にゴジラが現れたら……という物語の作り方がこれまでの全くの虚構とは違っていて観ていて親近感が沸くのかもしれない。今や怪獣との戦い方も今どき過ぎて、ここまできたのか!と天晴れである。しかもこの作品は、ちょいちょいiPhoneで撮影されていると聞いていて、そこも興味があったのですが、全くわからない!そういうことも全部含めて、脚本・総監督が庵野秀明だということで、あ、納得ね、と思っちゃうからスゴい。

この映画が公開された一ヶ月後くらいに『君の名は。』が公開されて、この破壊的エンターテイメントが薄れていったのが本当に悲しい。(個人的意向ですから!)

 

★怒り 7月29日公開 ★


©2016映画「怒り」製作委員会

吉田修一原作の「怒り」を李相日監督が映画化。すごい俳優が一気に登場している映画だ、という印象が強いかもしれないけど、逆に言うと主役級の実力がないと成立しない物語、だったのです。殺人事件の現場に残された「怒」の血文字が残った未解決殺人事件。それから一年後の東京、千葉、沖縄を舞台に3つの物語で紡がれる群像ミステリー。

渡辺謙、森山未來、妻夫木聡、綾野剛、宮﨑あおいらが、これまでに見せたことのない芝居をしているのも見どころのひとつだけれど、やっぱりピカイチの演技をしたのは、森山未来。この物語は、誰もが怒りを持って生きているけど、誰一人としてそれを表に出していない。怒っていないのに、心に怒りを抱えている演技って、想像しただけで難しい。加えて、この映画のおもしろいのは、李監督の考え抜かれた演出。物語の種明かしを少しずつ、ちょっとした違和感、くらいの小さなヒントを与えながら、観客の心を物語へと引き込む求心力のある演出と構造を作り上げたことが勝算なんだと思うのです。

正直なことを言うと、原作を読んだ時点では、ここまでの想像はできなかった。きっとそれは監督自身が脚本を手掛けているからこそ、想像の道筋をコントロールできたような気がする。(ホントのところはどうなんだろう……)前に書いた私が好みのタイプの山崎貴監督とは、真逆の感性を持っている監督だけど、李監督も好き。山崎監督が視覚的イメージをコントロールする名手だとしたら、李監督はエモーショナルな部分をコントロールするのが上手いんだと思う。またしても、李監督にやられた感が否めない。俳優の違う顔を引き出し、観客の感情を突き動かせるなんて、誰もができることじゃない。そう思うと、やっぱり「怒り」は今年観てよかった一本でしたね。

 

さて、2回に分けて2016年のおさらいをしました。もうお気づきかもしれませんが、誰もが今年観て良かった映画の中に入れてそうな「君の名は。」は、入っていません。もちろん素晴らしい映画だったのですが、タイトルにも入れているように、超個人的見解なので、私的にはそれより心に、印象に残っている映画があったということだけなのです。基本的にミーハーなので、流行りものにはすぐ飛びついちゃうのですが、それを全部自分の引き出しに入れるのか、というとそうじゃない。

なのでみなさんも、自分の気持ちに正直になってみて、自分の嗜好を探ってみてください。映画の好みって意外にその人の人間性が映し出されたりするからおもしろいんです。ってことを、来年やってみてはいかがでしょう?

2017年は、どんな作品に出会えるのか楽しみです!

 

 

取材・文:筒井あや
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