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12/3(土)公開『アズミ・ハルコは行方不明』蒼井優×松居大悟監督インタビュー

2016年12月02日 12:00 by 筒井あや

突如、街中に拡散される女の顔のグラフィック・アート。無差別で男たちをボコる、女子高生集団。OL安曇春子(28)の失踪をきっかけに交差するふたつのいたずら。この失踪事件の背景と行く末を、“アラサー、ハタチ、女子高生”の三世代の女の子たちの生き方を浮き彫りにしつつ描いた山内マリコの同名小説を原作に、監督・松居大悟が映画化。本作について、主演の蒼井優、松居大悟監督にインタビュー。

――監督は原作を読まれた時に、ハルコは蒼井優さんだと感じたそうですが、その理由は?

松居大悟監督:以前から、テレビや映画で活躍されている同世代の女優・蒼井優さんは、一ファンでもありましたが、同時にいつかいっしょに作品を作れたらと思っていました。主人公のアズミハルコは、行方不明になるけれども、彼女が失踪している間にも作品中でその存在感が大きくなっていくんですね。主人公の年齢(28歳)も含め、その年齢に近くて存在感を出せる女優さんと考えた時に、一番に蒼井優さんが浮かびました。さらに今回は、映画のプロデューサーが同じ歳だったんですけど、企画を頂いて最初にキャスティングの打ち合わせをした時に、お互い一番に名前を挙げたのが蒼井優さんだったんです。しかも僕らと同世代ですし。なので思い切ってオファーしました。

――そのオファーを受けた時の蒼井さんの気持ちはいかがでしたか?

蒼井優:まずは、監督とプロデューサーが同じ歳ということで、とても新鮮なオファーだなと思いました。これまでは年上の監督としか仕事をしたことがなかったので、いよいよ同じ歳の人たちから話を頂けるようになったんだという喜びがありました。そして原作を読んだ時に、私自身はアズミハルコと同じ経験をしたということはないのですが、これは私なんじゃないかなと思ったんです。さらにこの作品は人によって受け取る部分が全く異なる映画になりそうだと、面白い作品になるんじゃないかと感じました。でも映画の出来上がりが想像できなかったというのもあります。どうなるかわからない、約束されていないところに、同じ歳同志で手を取り合って突き進むって、なんて夢のあることなんだろうと。まだ俳優として守りに入る年齢じゃないぞ、攻めろと言われている気がして、やってみようと思いました。

――これは私のことだと思われたのはどういうところですか?

蒼井優:女性って、30歳手前になると、急に人生の肉離れを起こすというか、第二次思春期を迎えるんですね。私の周りでもそんな話をしていて、まさにハルコはその真っ只中にいて、そこを超えていく。その一連が描かれているんです。過去も未来も全部なくていいから、今歩いている道じゃないとことろにいけないかなって、考えるだけムダなことを考えたりするんです。後ろを振り返っても、何も変えることはできないのに後ろを振り返ったり、前を向いても肉離れを起こしちゃってるから進めないみたいな、そういう立ち止まる時期が、女性にはあるんですね。それがまさにアズミハルコの中で起きている。アズミハルコの中で起きていることと私の中で起きていたことが同じで、そういう部分にも共感できたというのが一番にありました。

――監督は映画化する際に、ポイントにしようと思った部分はどんなところですか?

松居大悟監督:原作の山内さんの作品が持つ、文字なのに匂いを感じる部分。どうしてこの人は僕が見た景色を知っているんだろう?と思うような、そんな感覚がありました。原作が持っている文字から伝わる部分を、感覚的に映像で作る。その部分は大切にしようと思っていました。

――原作と出来上がった映画と、時系列が違う構成になっていますが、どんな意図があってそうされましたか?

松居大悟監督:原作の面白さは、文字として読み進める面白さがあります。もちろんそのまま映画にも出来たのですが、僕は原作を読んだ時に「行方不明」という言葉に爽快感を感じたんです。なので「行方不明」という文字や言葉が持つ意味、そういうものに囚われない作品にしたいと思いました。主人公のハルコとハタチの愛菜を軸にして物語は進むのですが、この2人の関係性を、より親密に感じられるものにしたかったので、愛菜がハルコに近しい経験をして、ハルコに近づいていく。置かれている立場や環境は違うけれど、傷つきながらも自分の人生をどう生きていくか、それぞれの世代の物語だと観て欲しくて、対比させるような形で時間軸を別々にして構成しました。

――石崎ひゅーいさんと共演されてみていかがでしたか?

蒼井優:今回、石崎さんと共演できてよかったなと思うのは、私はお芝居の経験がわりとあるので、技術的に芝居してしまうことがあるんです。なので常にそうならないように注意しているんです。けれども、こびりついた垢みたいなものが出ちゃう時があって、それって映画にとってはとても危険なことなんです。石崎さんは舞台は一度経験されているんですけど、映画は初めてということもあって芝居がとても素直なんです。いっしょに芝居をしていて、私が自分の芝居に対して嘘が入ることや、麻痺している部分を無視してしまうことに対する警戒心を常に持たせてくれました。石崎さんを選ばれた監督ってスゴいって思いました(笑)。

――脚本を読んだ時には出来上がりが想像ができないといわれていましたが、実際に完成したものを見ていかがでしたか?

蒼井優:自分の想像していたところのラインを突き破った作品になったなと思いました。時系列を変化させたことによって生まれたエネルギーが確実にあったし、音楽とアニメーションが混在しているというのも、一見まとまりがないように感じられますが、何とも言えない一体感があって、たまらない映画ができたなと思っていますね。単純にこの映画好きだなと思いました。三十路のど根性みたいな映画というか(笑)、賢くもなければ洗練もされてなくて、決していい子ではない映画を目指して、ちゃんとそれが出来たというのは、まだまだ私達ここからだなと。1人の人間として背中を押してくれた作品になりました。

 

【蒼井優】スタイリスト:森上摂子(shirayamaoffice)ヘアメイク:赤松絵利(esper.)

取材・文:筒井あや
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