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映画『湯を沸かすほどの熱い愛』中野量太監督インタビュー

2016年10月14日 18:00 by 筒井あや

“死にゆく母と、残される家族が紡ぎだす愛”という普遍的なテーマを、想像できない展開とラストにより、涙と生きる力がほとばしる、驚きと感動の詰まった物語に昇華させた映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。自身が手がけたオリジナル脚本で商業デビューを飾ったのは、自主制作映画『チチを撮りに』(12)が、ベルリン国際映画祭他、国内外10を超える映画祭で絶賛された、中野量太監督。

脚本を読み、「心が沸かされた」と出演を決めたのは宮沢りえ。会う人すべてを包みこむ優しさと強さを持ちながら、人間味溢れる普通の“お母ちゃん"という双葉役を、その演技力と熱量で見事にスクリーンに焼きつけました。気弱で引きこもり寸前の娘・安澄には、杉咲花。共演者にオダギリジョー、松坂桃李らの実力派俳優陣が揃った。

本作で脚本・監督をつとめた中野量太監督にインタビュー。

――銭湯をモチーフにした物語をどのような着想で書かれたのですか?

家族の物語ですが、今回は特に母親がメインの作品です。母の持つ優しさや温もり、強さというのは、誰もが知っているし共感できる部分も多いと思います。そういう人間の持っている根本的な心情を描きたかったんです。僕は家族や親子の愛をテーマに作品を作ることが多いのですが、銭湯という場所はとても不思議な空間だと以前から思っていました。知らない者同士が同じ湯船に入って癒やされたり、知らない人同士が牛乳を飲みながら世間話をしたり。そういう不思議な人と人との繋がりがある空間を、素敵な場所だと思っていたので、僕が描こうとしているテーマにはぴったりな場所でした。加えて、とても日本的な部分にも惹かれていました。学生の頃の卒業制作でも銭湯をモチーフにした作品を撮りましたが、今回、初めて商業映画でデビューさせていただくことになって、もう一度銭湯という場所で、僕がやりたいと思っているテーマに真っ正面から向き合ってみようと思ったのがきっかけでした。一番描きたかったのはラストシーンです。あのラストシーンを成立させるために、そこまでを丁寧に撮りたいという思いもありました。

――主演の宮沢りえさんは、脚本を読まれてすぐにオファーをOKされたそうですね。キャストの方々の脚本を読まれての感想は聞かれましたか?

宮沢りえさんには、朝脚本を読んで、昼には出演することを決めたと言って頂きました。すごくうれしかったです。この物語は母の話であり、死にゆく人の話でもあります。どちらの感覚もきちんと理解している方にお願いしたかったので思い切って宮沢さんにオファーさせて頂きました。今のタイミングで僕は宮沢さんにこの役をやって欲しいと思い、宮沢さんもこれは絶対私がやらなきゃと思っていただけたというのは、縁だと思っています。5年前でもダメだったし遅くてもダメだったように感じています。ですので、宮沢さんからOKをいただいてからが、この映画製作のスタートでした。オダギリジョーさんも脚本を読んでいただいたら、すぐにやりたいというお返事をいただいたんです。実は娘・安澄役の杉咲花さんだけは当て書きなんです。彼女とはどうしてもいっしょにやりたいという思いがあって、この役はとても難しい役なんですけど、杉咲さんだったらきっとやり切ってくれるだろうと思っていましたが、想像以上に応えてくれて素晴らしい演技をしてくれました。

――少し特異な家族の物語ですが、きっかけになったことがあったんですか?

家族って何だろう?というのが、テーマです。僕は母子家庭で育って、従姉といっしょに姉弟みたいに育ちました。もちろん家族だけど従姉だし、何が家族なのか?ということをずっと考えていたことがあって、でも全てはプラスに思考したんですね。従姉がいてくれて良かった、父親がいなくても悲しい思いをしたことはほとんどないですし。僕は食事のシーンをたくさん撮ります。それは同じ屋根の下で食卓をいっしょに囲んで食事をするというのは、血縁だからということではなく、それが家族の象徴だという思いがあります。家族とはなんだ?ということの答えはないですけど、家族らしいものというか、これが家族なのかな?ということを描きたいんだと思っています。

 

『湯を沸かすほどの熱い愛』は、10月29日(土)T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13ほかにて全国ロードショー

 

取材・文:筒井あや
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