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10/8(土)公開『お父さんと伊藤さん』タナダユキ監督インタビュー

2016年10月07日 12:00 by 筒井あや

第8回小説現代長編新人賞受賞した中澤日菜子の小説「お父さんと伊藤さん」を、タナダユキ監督が実写化。自分のペースで、日々の暮らしを大切に生きる女性・彩を上野樹里、ウイットに富み飄々と生きている彼氏・伊藤さんをリリー・フランキー、そして、頑固ながらも愛くるしい一面を持つ父親役に藤竜也が演じる。キレイごとだけで済まされない娘と父親の関係を中心に、家族という存在を、鋭くも温かな視点で描きました。今の時代を生きる、新たな“家族”の物語。

本作で監督を務めたタナダユキさんにインタビュー。

――原作を読まれて感じたことは?

原作の中に「父親が死んだら自分は泣けるんだろうか?」と主人公の彩が自問しているところがあって、原作の途中で泣けないという結論を出すんですね。彩が自問していることが、まるで私自身に言われているような気がして、すごくドキッとした部分が大きかったというのは、この映画を撮る上で、とても大きなことでした。自分で蓋をしていたものを開けられてしまった、ちょっとずらされてしまったような気持ちというか。今、私にこの作品をやりませんか、とお話をいただいたということは、自分なりに今やるべきことなのかなと思いました。

――原作のどこに軸を置かれて映画化されましたか?

原作を読んだ時に彩の世代(30代)の人たちって、気がつくと親の背中が小さくなっていて、「あれ?自分の親ってこんなにちいさかったっけ?」とふと気付いてしまう年代なのかなと思うんです。そういう年代にとって、老いていく親とどう向き合うのかということは、今の日本の社会問題と言えるくらい大きなテーマだと思いました。でもそこを重くなりすぎずに、どこか軽やかさを持って書かれていた原作だったので、その部分は大切にしようと思いました。

――監督ならではのエッセンスを入れた部分はありますか?

芝居をしているように見えない自然な演技というのを撮影する時は心がけていますが、それは役者さんたちの演技が上手くないとできないことなんです。もちろんこうして欲しいと思う私のプランもありますが、それに囚われすぎると映画の可能性を狭めてしまう気がして、俳優さんたちから出てきた芝居を受け入れつつ、軌道修正するようにしています。その方が映画が豊かになると思っているので。そう言う意味でも今回も素晴らしい俳優さんたちに集まって頂けたので良い作品に仕上がったと思っています。

――キャラクターに共感できる一方で、この映画の中に起きている事象が、今の社会の縮図のようなイメージも持ちました。その辺は何か意識されていましたか?

お父さんにはある秘密があって、それは身内にとってはスゴくキツいことだったんです。秘密が暴かれた時、家族はどうしたらいいのかわからなくなる。でもそんな時に、伊藤さんみたいな他者がいてくれるということが、救いになることがあるんですね。家族だけでは行き詰まることもあるからこそ、全く違う人と関係を築いていくというのは、すごく尊いことなんだなというのは、この映画を作ってみて改めて感じたことです。他人であれば少し無責任でもいいし、その無責任な発言の方が、問題を抱えている当事者からすると、実は少し気が楽になれたりもする。親身になった親戚から何か言われるよりは、どうでもいい一言の方がふっと楽になったりすることってある気がして。この作品は、家族の話を描きながらも、他者と関わることって今の時代はとても大事な事なんじゃないかなということを描いています。人と関わることは面倒だけど、面倒=人生ということかもしれません(笑)。

「お父さんと伊藤さん」は10月8日(土)より、T・ジョイ博多ほかにて、全国ロードショー

 

取材・文:筒井あや
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