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映画『怒り』李相日監督インタビュー

2016年09月13日 12:00 by 筒井あや

2010年日本アカデミー賞を受賞、また海外でも高く評価された究極のヒューマンドラマ『悪人』を生み出した監督・脚本:李相日×原作:吉田修一タッグが再び。主演に渡辺謙、他にも森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮﨑あおい、妻夫木 聡とらの人気・実力ともにトップクラスの俳優陣が集結。愛する人でさえ簡単に疑ってしまう不信の時代に“信じるとは?”という根源的な問いを投げかける衝撃の群像ミステリー。

——原作の長編小説の映画化にあたって、脚本を作る際にご苦労されたことは?

李監督:大変すぎて言葉に出来ないですね(笑)。脚本も、撮影も大変でしたが、一番大変だったのは編集作業でした。脚本の段階で、ある程度の計算はしていま したが、実際の撮影でそれが計算通りにはいかないので、編集で色々試しながら改めて組み立てていきました。3つの物語を、それぞれ一本の映画として成立す るくらいの質量とクオリティーを保とうと考えて撮影しました。ですが、編集の段階でどうすれば3つの別の物語を完全に一つの作品として観ている人に受け止 めてもらえるか、ということは苦しんだところです。俳優のみなさんにあれだけ素晴らしい演技をしていただいているのですが、泣く泣くカットしたシーンもた くさんあります。

——キャスティングされる際に、決め手にされたことはどういったことですか?

李監督:この作品に限らず、キャスティングする時に、できるだけ大事にしたいなと思っているのは、本人の資質ですね。それは事実とは違うかもしれませ ん。普段見えている、その俳優のパブリックイメージとか自分たちが思っている印象の、そうではない部分を、自分なりに一所懸命想像するんです。その俳優の 表に出ていない奥にある部分と、役の一番核になる部分がどこか繋がる人を捜しています。

——俳優さんたちにリクエストされたことはありますか?

李監督:直接そうは言っていないんですけど、とにかく腑を見せて欲しいということですよね(笑)。心を開くとかそういうレベルの話ではなくて、さらけ出すというか……臓物を撒き散らせ、的な(笑)そういうことをずっと求め続けたんだと思います。

——坂本龍一さんにポジティブなシーンにもネガティブなシーンにも使えるような音楽を、とリクエストされたそうですが。

李監督:映画全体の大きな音楽のテーマの柱が「怒り」と「信頼」という二つのテーマを持って作っていただきました。「怒り」に関しては、どちらかというと目 に見えない「怒り」。人の心の奥に潜んでいるもの、それがどう個人の中で、巡っているか滾っているか、という内面を「怒り」として表現して欲しいというこ と。もう一つの「信頼」という音楽には、「信頼」と真逆の「不審」ということを併せ持つ音楽にして欲しいとお願いしました。同じメロディーで「不審」とし て聴いていたものが、最後は「信頼」に転換する。それは物語の流れと俳優の演技だけでなく、音楽でも表現して欲しかったことなので、そういうオーダーをし ました。なので全く同じメロディーなのに、シーンによっては真逆の聞こえ方をするんです。勝手なお願いですよね(笑)。でもとても素晴らしい音楽を作って いただけたのでうれしかったです。

——この作品を作り上げられての感想はいかがですか?

李監督:出発点はあくまでも吉田さんの小説でしたが、小説を忠実に映画化しようということではなくて、原作と全く同じ思いをどこかで持つことが出来たんで す。それは多分、劇中に出てくる「本気って目に見えないから」とか、いくつかの台詞に象徴されるように、どこか自分たちがたくさん見失っているものの集積 だったのだと思います。坂本さんの音楽の流れで言うと、「怒り」があって「信頼」があって、最後のエンドロールにかかるのが「赦し」という曲なんです。そ れと犯人をただの殺人鬼にして終わらせたくなかった。怒りというものに全て囚われてしまった人間の帰結と、同じ怒りを抱えていても、愛情で浄化できた人間 と、それぞれの帰結を見せたときに(観る人には)何が見えるかなと思っています。

 

『怒り』(PG12)はTOHOシネマズ天神ほか にて9月17日(土)より全国ロードショー

取材・文:筒井あや
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